トランプ氏の感染告白ツイートの影響を分析する

著者:吉田 哲
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原油反落。ドルインデックスの反発などで。39.50ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの上昇などで。1,886.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

上海原油(上海国際能源取引中心)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

金・プラチナの価格差、ドル建てで1024.7ドル(前日比13.8ドル縮小)、円建てで3,502円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月7日 20時18分頃 先限)
6,447円/g 白金 2,945円/g
ゴム 188.3円/kg とうもろこし 24,220円/t

●NY原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)
NY金先物日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「トランプ氏の感染告白ツイートの影響を分析する」

前回は「米国の大規模な金融緩和が、長期的に金と原油相場を支える」として、米国の大規模な金融緩和が、金と原油相場に与える影響について、考えました。

今回は「トランプ氏の感染告白ツイートの影響を分析する」として、先週金曜日のトランプ大統領のコロナ感染を告白するツイートが、金と原油相場に与えた影響について、考えます。

金と原油はともに、当該ツイートをきっかけに、その後の選挙戦や選挙後の展開への思惑を含む、上昇・下落、複数の材料を織り込み、価格が推移したと言えます。まとめれば、以下のようになります。

金も原油も、上昇・下落、いずれも存在し、上昇・下落それぞれにおいても、複数の材料が存在するわけです。材料を1点だけでみて、値動きを説明できないことが、改めてわかります。

“トランプ大統領感染”“金価格上昇”というキーワードをみると、不安(有事)の拡大で金が買われている、と考えたくなりますが、それは金相場の一部であり、すべてではありません。他にも、株安起因の“代替資産”の需要拡大という上昇要因があります。一方で、ドル高起因の“代替通貨”の需要減少、新興国の宝飾需要減少懸念などの下落要因が存在しています。

原油も同様です。“トランプ大統領感染”“原油価格下落”というキーワードをみると、株価が不安定化していることから、需要減少懸念で原油が売られている、と考えたくなりますが、それは原油相場の一部であり、すべてではありません。他にも、クリーンエネルギー推進による需要減少懸念という下落要因があります。一方で、OPECへのけん制力低下という上昇要因が存在しています。

2017年1月の就任後、数年間、原油高とそれを誘発しようと画策してきたOPECをけん制したトランプ大統領が、次期大統領にならなかった場合、それらをけん制する力が減退する可能性が出てきます。

金も原油も、同時に複数の材料が作用し、相殺され、価格が決まる、という考え方は非常に重要ですので、今回のトランプ大統領感染を機に、習慣付けるとよいと思います。

図:トランプ氏の感染告白ツイート直後の金と原油の市況環境
トランプ氏の感染告白ツイート直後の金と原油の市況環境

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。