“バイデン・ワクチン相場”で原油価格は20%、プラチナ価格は10%上昇

著者:吉田 哲
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原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。44.80ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,780.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は15,310元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年01月限は281.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで816.4ドル(前日比6.9ドル縮小)、円建てで2,777円(前日比34円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月30日 17時37分頃 先限)
5,962円/g 白金 3,185円/g
ゴム 250.9円/kg とうもろこし 24,910円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“バイデン・ワクチン相場”で原油価格は20%、プラチナ価格は10%上昇」

前回は「米シェールは、もはや斜陽産業!? 回復しない同地区の原油生産量②」として、米シェール主要地区の原油生産量が減少している一因について、筆者の考えを書きました。

今回は「“バイデン・ワクチン相場”で原油価格は20%、プラチナ価格は10%上昇」として、11月3日(火)の米大統領選挙の投票日から、11月27日(金)までの各種コモディティ銘柄の騰落率に注目します。

筆者が呼び名を考案した“バイデン・ワクチン相場”とは、ワクチンに大きな効果ある旨の報道と、バイデン氏の勝利宣言およびバイデン次期政権の人事が進むことで生じた強い“期待”をきっかけとした、過熱感を帯びた“リスクオン”のムードが、幅広い市場を覆い、理屈を度外視して多くの銘柄の価格が上昇している相場のことを指します。

金や銀などの相場過熱時に売られる傾向がある、無国籍資産の色合いが強い銘柄は、下落していますが、この点は、“バイデン・ワクチン相場”が過熱感を帯びているとする考え方を、逆の側面から、補足しています。

さらに“バイデン・ワクチン相場”が過熱感を帯びているとする考え方を、補足するデータがあります。以下のグラフは、大統領選挙の投票日から11月27日までのさまざまなコモディティ銘柄の騰落率を示しています。

過熱感が生じた時に売られる傾向がある金、そして金に追随する傾向がある銀、10月に主要生産国で供給障害が発生する懸念が生じて大きく上昇し、11月に入り一時的な調整局面に入っているとみられる小麦を除き、いずれも上昇しています。

鉛、亜鉛、ニッケル、スズなどの非鉄金属、大豆、トウモロコシなどの穀物、コーヒー、砂糖、生牛、赤身豚肉、天然ゴム、綿花、木材などの農産物および農産物を加工した製品の価格が、軒並み、上昇しています。これらの一部は、先物市場としては、売買はそれほど活発に行われていない、いわゆるマイナーなコモディティ銘柄です。

原油や銅などのメジャーなコモディティ銘柄はもちろん、マイナーなコモディティ銘柄までも上昇しているのは、コモディティ市場全体が“リスクオン”のムードに覆われているためと、考えられます。

“バイデン・ワクチン”への強い期待が生んだ“リスクオン”は、主要株価指数やメジャーなコモディティ銘柄にとどまらず、マイナーなコモディティ銘柄までも、浸透していると考えられます。

たしかに、銅などの中国の消費量が多いコモディティ銘柄は、7月~9月期のGDPが、新型コロナが存在しなかった前年同期に比べて増加し、足元、新型コロナの感染拡大がほとんど起きていない中国の、経済回復を織り込んでいる可能性はあります。

とはいえ、一部の銘柄はそうであったとしても、金と銀、小麦を除く多数のコモディティ銘柄が上昇した理由を、中国経済の回復期待だけに求めることは、難しいと感じます。

世界全体としてはコロナ禍であるため、例えばコーヒーやカカオなどの嗜好品の色合いが強い銘柄の消費が減退する懸念があり、むしろこれらの価格は下落してもおかしくはないでしょう。

バイデン氏の勝利宣言をきっかけに、クリーンエネルギーの台頭観測により原油価格が、世界的にコロナ禍が続いているため嗜好品価格が、下落する可能性があるものの、逆に上昇していることを考えれば、やはり“バイデン・ワクチン相場”は、株価指数、コモディティといったジャンルを横断し、かつコモディティ銘柄のマイナー銘柄にも強い過熱感を浸透させるほどのリスクオンであると、言えそうです。

図:11月3日(火)から27日(金)の、各種コモディティ銘柄の騰落率


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。