“イメージ”で論じてはいけない。プラチナの需要は“実態”に着目。

著者:吉田 哲
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。45.26ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,795.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は15,385元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年01月限は286.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで805.4ドル(前日比9.6ドル縮小)、円建てで2,728円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月1日 17時11分頃 先限)
6,012円/g 白金 3,284円/g
ゴム 248.7円/kg とうもろこし 24,830円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“イメージ”で論じてはいけない。プラチナの需要は“実態”に着目。」

前回は「“バイデン・ワクチン相場”で原油価格は20%、プラチナ価格は10%上昇」として、11月3日(火)の米大統領選挙の投票日から、11月27日(金)までの各種コモディティ銘柄の騰落率に注目しました。

今回は「“イメージ”で論じてはいけない。プラチナの需要は“実態”に着目しなければならない」として、プラチナの需要動向(年ベース)に注目します。

以下のグラフは、プラチナの全需要と、その中の自動車排ガス浄化装置向けの需要の推移を示しています。

2015年9月に発覚した、“フォルクスワーゲン問題”(ドイツの自動車大手の同社が、違法な装置を使い、排ガステストを潜り抜けていた問題)が発覚したことをきっかけに、同社の主力車種であったディーゼル車への不信感が高まり、同車の排ガス浄化装置に多用されるプラチナの消費が減少するとの見方が、強まりました。

そして、同問題を機に、プラチナの消費が減少し、プラチナ価格は下落するとの見方が大勢となりました。また、その後、欧州を中心とした主要国の環境規制の強化が進んだことも相まって、プラチナの消費はさらに減少するとの見方が強まりました。

とはいえ、グラフのとおり、プラチナの2019年の全需要は、同問題が発覚する前の2014年を超えています。これは、問題が発覚した2015年以降の自動車排ガス浄化装置向けの需要がさほど大きな減少になっていないこと、投資向けの需要が増加したことなどが、要因とみられます。

“イメージ”と“実態”が乖離(かいり)しているわけです。フォルクスワーゲンの問題発覚や環境規制の強化が、プラチナの消費を減少させる“かもしれない”というイメージが先行したものの、データが示す実態は、多くの関係者が抱いたイメージと、異なります。

確かに、問題発覚以降、欧州のディーゼル車の生産台数は減少しました。しかし、自動車排ガス浄化装置向けの需要が急減していないのは、世界的に環境規制が強化される中、規制に対応し続けるべく“自動車1台あたりの同需要”が増加したためだと、筆者は考えています。

“かもしれない”ではなく、データを見ることが重要です。あるアナリストは、需要が減少するかもしれないという“イメージ”が先行したことが、近年のプラチナ価格の低迷の一因であり、これは“風評被害”である、と指摘しています。筆者は、この指摘に、おおむね同意します。

図:プラチナの需要動向(年ベース) 単位:千オンス


出所:WPIC(World Platinum Investment Council)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。