これまでコロナが与えた米国石油産業への影響

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。46.12ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,863.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,260元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年01月限は284.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで827.55ドル(前日比10.35ドル縮小)、円建てで2,829円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月9日 19時2分頃 先限)
6,238円/g 白金 3,409円/g
ゴム 234.5円/kg とうもろこし 24,560円/t

●WTI原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「これまでコロナが与えた米国石油産業への影響」

前回は「上昇率127%。新型コロナ・ショック後に大幅上昇した原油相場」として、3月に発生した新型コロナ・ショック後の主要銘柄の騰落率について、書きました。

今回は「これまでコロナが与えた米国石油産業への影響」として、EIA(米エネルギー省)が12月8日に公表した月次レポート(STEO:短期見通し)および、今年1月14日に公表した同レポートより、米国国内の石油産業に関するさまざまなデータを確認します。

以下の表は、2020年の11月のデータについて、1月時点の見通し(1月14日公表)と実績値(12月8日公表)、およびそれらの変化(量・率)を示しています。

前提として、1月14日に公表されたSTEOは、新型コロナがパンデミック化する前に作成されたものであるため、“コロナ前(ビフォー・コロナ)の見通し”であり、12月8日に公表された同レポートは“コロナ禍(ウィズ・コロナ)における実績値”、と言えます。

1月に公表されたSTEOには“corona”や“Covid-19”、“virus”などの単語は、筆者が確認したところ、記載されていません。2月や3月の同レポートには、12月の同レポートほどではないものの、その記載が確認できます。

2020年11月のデータについて、コロナ前の見通しより実績値が減少したのは、米国全体と48州の原油生産量、そしてガソリン、航空機燃料、それらを含んだ石油製品全体の消費量でした。

理屈の上では、輸出入を勘案しなければ、生産と消費によって、在庫が決まります。在庫は原油在庫、石油商業在庫、ともに増加しましたが、変化率はともに+3%強でした。生産量や消費量の変化に比べれば、小規模です。

11月の両在庫の見通しと実績値は、コロナ前とコロナ禍であっても、ほぼ変わっていないと言ってもよいと思います。

一方、米国全体の原油生産量は17.02%(日量229万バレル)減少しました。新型コロナショック後の原油価格急落・低迷により、米シェール主要地区の原油生産量が減少したためと、考えられます。

また、消費は、ロックダウンなどの影響で、石油製品合計で10.16%(日量212万バレル)減少しました。

コロナ前の見通しに比べてコロナ禍の実績値が減少したことについて、消費量の減少に応じて生産量が減少したのか、生産量と消費量が異なる要因で減少したのか、このデータだけでは明確なことはわかりません。

ただ、在庫についての見通しと実績値がほとんど変わっていないことから、石油産業を支える重要な柱である生産と消費が、同じ規模で縮小した、という点は、事実として挙げられます。

見通しよりも在庫が積み上がってないから問題ない、のではなく、石油産業全体の地盤沈下が懸念されているわけです。

バイデン新政権が謳うクリーンエネルギー策は、さらなる石油産業の地盤沈下を招く可能性があります。

同氏の政策実施状況、そして、関連する石油関連のデータを、今後も注視していきたいと思います。

図:2020年11月の米国の石油産業に関わるデータ


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。