株価が上昇すれば、原油価格も上昇せざるを得ない!?

著者:吉田 哲
原油反落。米国の主要株価指数の反落などで。48.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,883.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,220元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年02月限は307.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで848.95ドル(前日比5.25ドル縮小)、円建てで2,868円(発会直後のため前日比はなし)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月24日 18時46分頃 先限)
6,275円/g 白金 3,407円/g
ゴム 231.5円/kg とうもろこし 25,450円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「株価が上昇すれば、原油価格も上昇せざるを得ない!?」

前回は、「サウジ・ロシアは真面目に減産実施中」として、サウジとロシアの原油生産量について書きました。

今回は、「株価が上昇すれば、原油価格も上昇せざるを得ない!?」として、株式市場と原油市場の関係について、筆者の考えを述べます。

近年、市況環境の変化によって、原油相場と株式相場の関わりが、以前と異なる意味で強くなってきていると、筆者は考えています。

お互い、(期待だけで)実態を伴っていなくても上昇したり、11月の期待先行相場“バイデン・ワクチン相場”がそうであったように、株価が上昇する時に、強い下落要因を抱えていても株価の上昇に倣って原油相場が上昇したりするケースが散見されます。

原油価格が下落した場合、世界経済が悪化しているのではないか、産油国が資産を売却するのではないか、などのマイナスの心理が浮上することがあります。

原油価格の下落は懸念を生むため、期待や懸念などの思惑で動く傾向がある株式市場の下落要因になり得ます。

株価上昇時に、原油価格が下落すると、景気好転を示唆する株価上昇との整合性がとれない、マイナスの心理が浮上する、など、株式市場の投資家において不都合・不安が生じ、株価のさらなる上昇が阻害されかねません。

この意味では、株価上昇時の原油価格の下落は、株式市場に望まれない、と言えます。このように考えれば、株式市場と原油市場は、ある意味、運命共同体と言えます。

この点は、クリーンエネルギーが台頭し、下落要因にさらされていても原油相場が上昇することができる理由の一つと考えられます。

いずれの産油国も、産油活動以外で十分な収入を得られるようになること、先進国・新興国問わず、原油をエネルギー源や生活必需品(化学繊維、塗料、プラスチック製品など)として用いなくなること、といった、供給・消費の両サイドで、原油の重要性が、大幅に低下した時(原油が政治的武器にならなくなった時)、ようやく、株式市場と原油市場の結びつきがほどけると、筆者は考えます。逆に、そのような日が到来するまでは、株式市場と原油市場の連動性は保たれると、考えます。

また、NYダウが上昇している意味を深堀りすると、“上昇しなければならない事情”が透けて見えてきます。

例えば、企業や個人の保有資産の価値が高くなれば、その企業や個人の投資意欲・購買意欲がかき立てられます。投資や購買活動によって、企業や個人が資金を社会に放出し続けることは、社会基盤を不安定化させない意味で、必要です。

この意味では、株価上昇は、社会基盤が不安定化することを防いでいる、と言えます。

株価が上昇していると、景気が上向いている“感覚”になれる点も、心理的な側面から社会基盤が不安定化することを防いでいる、と言えます。社会の安定には、株価の上昇は必要なのです。

仮に実態が伴っていなくても、上昇することは株式市場に課せられた必須命題なのかもしれません。経済が不安定で、本来は上昇が見込めない状況でも、数カ月や数年先の期待を“今”織り込んで(期待を前借してでも)上昇することがあるのは、このためです。

このように考えれば、株式市場は、市民が社会基盤の安定化を願う“信仰の場”という側面を持っていると言えそうです。市民の多くが下落しないことを願ったり、上昇を喜んだりする場、という意味で、です。

2021年は2020年以上に、クリーンエネルギーに注目が集まると考えられます。注目が集まる際、各種ニュースで“原油相場は下落するだろう”などといった見出しが躍るかもしれません。

しかしその時、社会基盤の安定化という使命を背負い株価が上昇していれば、運命共同体ともいえる原油相場はその株価に倣い、上昇している可能性があります。

必ずしも“クリーンエネルギーの台頭=原油相場の下落”という展開にならない場合がある点に、留意が必要です。

図:株式市場と原油市場の関係


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。