緊急事態宣言、変異種発見…。金価格の上昇要因の一つ、有事のムードが拡大中

著者:吉田 哲
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。53.21ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,862.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,155元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は344.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで790.25ドル(前日比15.95ドル縮小)、円建てで2,674円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月12日 19時3分頃 先限)
6,239円/g 白金 3,565円/g
ゴム 236.5円/kg とうもろこし 26,900円/t

●NY金先物(期近) 日足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「緊急事態宣言、変異種発見…。金価格の上昇要因の一つ、有事のムードが拡大中」

前回は、「OPECプラスが一枚岩でない可能性を示すデータ①」として、2021年1月5日(火)に開催された第13回OPEC・非OPEC閣僚会議の決定事項の中から、OPEC側、非OPEC側、OPECプラス全体の、2021年1月から3月までの、原油生産量の上限について、書きました。

今回は、「緊急事態宣言、変異種発見…。金価格の上昇要因の一つ、有事のムードが拡大中」として、足元の、日本などの新型コロナの推定患者数について、書きます。

1月7日(木)夕方、日本政府は、昨年末から続く、爆発的ともいえる新型コロナウイルスの感染拡大を鎮静化し、感染縮小への道筋を見出すため、新型インフルエンザ対策特別措置法(特措法)に基づき、感染拡大が目立つ地域を対象に、緊急事態宣言を発出しました。感染を拡大させる最も大きな要因とされる“人と人のとの物理的な接触”の低減を目指すものです。

当該地域の、飲食を伴う施設の20時以降の営業、および市民の20時以降の不要不急の外出を自粛する旨、要請が出されました。また、当該地域の学校などにおいて、飛沫が拡散しやすく、対策を講じてもなお感染リスクが高いとされる教育活動を一時的に停止する旨の要請も出されました。

以下のとおり、現在の、日本の同ウイルスの患者数の動向は、“異次元”の領域に入っていると言わざるを得ません。患者数の増加は、医療体制をひっ迫させる直接的な要因になり得ます。実際に、病床の使用率が7割あるいは8割に近い水準まで上昇している地区もあると、報じられています。

感染拡大が始まった2020年1月からの、日本の同ウイルスの患者数の動向を振り返ると、増加傾向にある現在を含め、山(ピーク)は3つあります。2020年5月上旬、8月下旬、そして現在です。

5月上旬から患者数が減少に転じた要因は、学校の休校を含めた厳しい内容の緊急事態宣言が発出されたことで、全国的に移動制限がかかったため、8月下旬から患者数が減少に転じた要因は、医療提供体制の増強によって対応件数が増加したため、などが考えられます。

どうすれば、足元、“異次元”とも言える増加をみせている患者数を減少させることができるのか?という問いへの答えは、例えば、過去2回、患者数が減少に転じた事例から考えれば、1回目と同様の厳しい内容の緊急事態宣言を発出し(患者数を増やさない策)、さらなる医療体制の増強を図ること(患者数を減少させる策)を、同時進行させる、となるのではないでしょうか。

ただ、現実問題として、このようなことが、できるかできないか、そもそも検討・実行する必要があるかないかは、専門家会議がさまざまなデータをもとに考え、それに基づき政府が判断するわけですので、わたしたち市民は、日本で暮らす以上、彼らが考えて行動・決定するのを待ち、決定した内容を受け入れるほかありません。

新型コロナがもたらす、“不安”や“いら立ち”は尽きません。患者数が“異次元”の増加傾向にあったり、政策が決まるのを待ち、それを長期間順守したりすること以外にも、世界各地で変異種が発見されていること、将来の生活と経済の復活の拠り所としているワクチンの有効性をまだ実感できていないことなど、新型コロナ起因の“不安”と“いら立ち”をかき立てる要因は複数、存在します。

このような、大衆の“不安”や“いら立ち”は、積み重なって強大な“有事のムード”を形成し、金(ゴールド)価格を押し上げる一因になる可能性があると、筆者は考えています。

図:日本などの新型コロナウイルスの患者数(人口100万人あたり 筆者推定) 単位:人 ※患者数は、感染者数-回復者数-死亡者数で計算


出所:ブルームバーグなどのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。