“株安・金安”が起き得ることを認めることが重要

著者:吉田 哲
原油反落。米国の主要株価指数の反落などで。52.84ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,854.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,575元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年03月限は339.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで741.95ドル(前日比16.95ドル拡大)、円建てで2,562円(前日比28円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月15日 19時44分頃 先限)
6,197円/g 白金 3,635円/g
ゴム 242.6円/kg とうもろこし 27,870円/t

●NY金先物(期近) 日足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“株安・金安”が起き得ることを認めることが重要」

前回は、「金投資家としてスキルアップしたければ、常識を捨てよ」として、筆者が考える、金投資家がスキルアップするために必要な条件について、書きました。

今回は、「“株安・金安”が起き得ることを認めることが重要」として、前回に続き、筆者が考える、金投資家がスキルアップするために必要な条件について、書きます。

以下のグラフは、緊急事態宣言が発出された日(2021年1月7日)の夕方から、1月12日(火)未明までの、世界の金(ゴールド)相場の指標の一つであるNY金先物と、NYダウ先物(米国の主要株価指数)の推移です。

NYダウは、日本で緊急事態宣言が発出・施行された時間帯、やや反発していましたが、8日夕方、ドイツとフランスの景況感を示す複数の経済指標が弱い内容だったことを受けて反落に転じ、その後の米雇用統計も弱い内容だったことを受けて下げ幅を拡大しました。

1月8日(金)の夕方からその日の取引終了時点まで、NY金先物とNYダウは、ともに下落していたわけです。株安は“代替資産”の側面で金(ゴールド)相場の上昇要因になり得ますが、この時間帯は“株安・金安”が起きていました。

それでは、日本で緊急事態宣言が発出・施行された時間帯以降の、金(ゴールド)相場の下落の直接的な要因は何だったのでしょうか?

金(ゴールド)価格が下落した1月8日(金)の夕方、ドル(ドル指数)が反発色を強めていました。米雇用統計の発表時、一時反落する場面がみられたものの、数時間後には同統計発表前を上回る水準まで反発しました。

1月8日(金)の緊急事態宣言発出後、“有事のムード”と、株安という“代替資産”起因の上昇要因がありながら、金(ゴールド)価格が下落したのは、これらの上昇要因を打ち消して余りある下落要因(この場合は、ドル高という“代替通貨”起因の下落要因)が、存在したため、と考えられます。

この時間帯のドル高は、ドイツとフランスの景況感を示す複数の経済指標および米雇用統計が弱い内容だったことを受け、昨年2月から3月にかけて発生した“新型コロナ・ショック”時に発生した“ドルの現金化”のような、リスク回避のドル買いが進行したことで発生したと考えられます。

“有事のムード”が強まっていたり、株安による“代替資産”起因の価格上昇要因があったりする中で、金(ゴールド)価格が下落したとしても、“有事のムード”、“代替資産”、“代替通貨”の3つを俯瞰(ふかん)し、これらの影響を足し引きすることで、その下落を説明することができます。

金投資家として、2歩目、3歩目、そしてそれ以降、スキルをアップさせながら、何年も、そして何十年も、長く、歩みを進めていくためには、前回述べた通り、(1) 過去の常識にとらわれない、(2) 材料を点でとらえない、(3) 複数の材料を同時に意識する、この3点は必須中の必須スキルだと、筆者は思います。

必須スキルの3点ができれば、現代の金(ゴールド)市場の値動きを説明できないケースは、ほとんどないと、筆者は考えています。逆に、この3点をおろそかにし、“有事のムード”や“イメージ”だけに頼っていては、いつまでたっても、1月8日の金(ゴールド)価格の下落を説明することはできないでしょう。

2021年は引き続き、コロナ禍ということもあり、2019年以前(コロナ前)よりも、時間の流れが速くなることが予想されます。そして、さまざまな分野で、2020年と同様あるいはそれ以上に、“常識外”“想定外”が発生することが、予想されます。

このような、変化に富んだ年だからこそ、金投資家としてのスキルを大幅にアップさせることができるチャンスなのだと思います。現代の金(ゴールド)相場を読み解く上での基本を忠実に実践することで、必ずや、スキルアップすることができると、筆者は信じています。

図:NY金とNYダウ先物の推移 単位:NY金先物 ドル/トロイオンス


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。