[Vol.922] バイデン氏は、ブレント原油の指標性を向上させる!?

著者:吉田 哲
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原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。53.02ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,851.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,060元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年03月限は328.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで757.9ドル(前日比7.4ドル拡大)、円建てで2,584円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月26日 19時9分頃 先限)
6,193円/g 白金 3,609円/g
ゴム 225.0円/kg とうもろこし 26,750円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「バイデン氏は、ブレント原油の指標性を向上させる!?」

前回は、「先週(1月15日~22日)は、“2番目銘柄”が上昇」として、先週1週間の各ジャンルの主要銘柄の騰落率を確認しました。

今回は、「バイデン氏は、ブレント原油の指標性を向上させる!?」として、WTI原油先物とブレント原油先物の出来高について述べます。

以下のグラフは、WTI原油先物(期近)とブレント原油先物(期近)の、出来高の推移を示しています。

2017年のトランプ政権発足時、WTI原油先物の出来高は、同じ世界の指標されるブレント原油の2倍前後、ありました。しかし、昨年4月のマイナス価格発生後、WTI原油先物の出来高は急減しました。現在は、WTIとブレントの出来高はほとんど差がありません。

マイナス価格発生後、WTI原油の2番限、3番限の出来高が増えたかといえば、取り立てて増えていません。このため、期近である1番限から2番、3番限に売買がシフトしたわけではありません。また、マイナス価格発生後、ブレント原油の売買が増えたかといえば、こちらも増えていません。

単純に、マイナス価格の発生を機に、WTI原油の売買が低下したと、言えると思います。マイナス価格が発生し得る市場に、不安定さを感じる、など、売買を生業とする投資家が、WTI原油市場が収益を上げる場としてふさわしくないと感じ、売買を敬遠している可能性も否定できません。

このような状況の中、バイデン新政権が正式に発足しました。基本的に、バイデン新政権は、トランプ政権と逆に、化石燃料の使用を推奨しないスタンスと考えられます。この点は、WTI原油先物の取引高、つまり出来高の低下に拍車をかける可能性があります。

バイデン氏のクリーンエネルギー策が進めば、米国国内の原油の重要性が低下し、売買がさらに低下して、出来高がブレントを下回る可能性があります。出来高は、どれだけその市場で売買されているか、つまり、どれだけ注目されているかを示す指標です。

出来高の逆転が起きた場合は、これまで以上に、ブレント原油を重視する必要が出てきます。この点は、バイデン新政権が及ぼし得る、原油市場への影響の一つと、考えられます。

図:WTI原油先物(期近)とブレント原油先物(期近)の出来高(週間) 単位:百万枚


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。