[Vol.946] OPECプラスは“増産”するのか!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。60.56ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,725.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は15,540元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年04月限は392.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで518.15ドル(前日比1.05ドル縮小)、円建てで1,798円(前日比38円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月3日 19時8分頃 先限)
5,945円/g 白金 4,147円/g
ゴム 269.7円/kg とうもろこし 29,010円/t

●NY原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OPECプラスは“増産”するのか!?」

前回は、「純金積立、6つのテーマの現在を俯瞰せよ」として、純金積立を行うための、長期的な価格動向に影響を及ぼす材料に注目しました。

今回は、「OPECプラスは“増産”するのか!?」として、3月4日(木)に予定されている、OPECプラスの閣僚会議で決定する可能性がある、“増産”について、考えます。

このおよそ1週間、ビットコインの他、金やプラチナ、銀などの貴金属、小麦やトウモロコシなどの穀物、そして銅、原油など、コモディティが全体的に下落しました。ドル円やドル指数が上昇し、ドルの上昇基調が目立ったことが、ドル建てのコモディティを全体的に下落させた要因とみられます。ドルの長期金利の上昇が、足元のコモディティ相場の強い下落要因になっていると言えます。

中でも原油相場は、先月、WTIベースで一時62ドル台まで上昇しましたが、60ドルを割り込む場面が見られています。全体的には、上昇・下落、両方の材料があると見ていますが、今のところは、やや下落要因が勝っているとみられます。

上昇要因は、米国の原油生産やメキシコ湾地区の石油製品の供給減少、そして、人権問題や隣国との紛争などを抱えたサウジの情勢の不安定化懸念です。下落要因は、3月4日に総会が予定されているOPECプラスの減産縮小観測などです。

下落要因に挙げたOPECプラスの減産については、減産の規模が縮小される懸念が市場のマイナス要因となっているとみられます。ただ、その規模縮小ですが、昨年5月の減産再開以降、何度も行われてきていますので、真新しい動きではありません。

また、調整量は、前月比日量50万バレル以内とすることが明言されていますので、サウジの自主減産停止を除けば、大規模な規模縮小になることは、ないと見られます。

12月の減産順守率は101%と、減産順守だったことから、減産を順守した上で、OPECプラスは前もって決めたルールに則り、作業を進めていると言えると思います。

昨年5月の減産再開以降の削減量は、次の通り、徐々に縮小されてきました。970万(2020年5月から7月まで)、770万(8月から12月まで)、720万(2021年1月)、2月(712万)、3月(705万)、655万?(4月?)

仮に、明日と4日の会合で、報じられているとおり日量50万バレルの減産規模縮小と、サウジの日量100万バレルの自主減産停止が決まった場合、4月以降のOPECプラスの原油生産量は今よりも増加する可能性があります。

ただ、増加した場合でも、世界の石油の需給バランスを大きく緩ませる方向には向かわないと、考えています。

以下のグラフの通り、昨年5月からOPECプラスは過去に例がない大規模な減産をしてきました。その大規模な減産が少し規模縮小となるレベルであるため、世界の石油の需給バランスを緩め、原油相場を需給の面で下落させることは、おそらくないと考えています。

OPECプラスの動向を見る上で、どの時点を基準に何バレル、いつまで、減産をするのか?という点を考える必要があります。単純に、“規模縮小”や“増産”、というキーワードが先だって、価格が下落している感もあります。実際には、もともと大規模な減産をしていた、ほぼ予定通り規模を縮小してきている、などの点に留意が必要です。

また、何より、減産は終わらずに継続する点に注目する必要があります。会合を終え、OPECプラスの会合をめぐるニュースが一巡し、市場が冷静さを取り戻せば、米国の原油生産量の減少などの上昇要因が目立ち、再び、62ドルを回復する可能性があると、現時点では考えています。

図:減産参加国の推定原油生産量と昨年5月以降の生産量の上限 単位:百万バレル/日量


出所EIA(米エネルギー省)などのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。