[Vol.965] スエズ運河事故起因の供給不安は“川中型”

著者:吉田 哲
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原油反落。ドル指数の反発などで。61.09ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米主要株価指数の反発などで。1,699.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,015元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年05月限は398.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで512.4ドル(前日比18.1ドル縮小)、円建てで1,855円(前日比45円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月30日 18時30分頃 先限)
6,024円/g 白金 4,169円/g
ゴム 248.1円/kg とうもろこし 29,890円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「スエズ運河事故起因の供給不安は“川中型”」

前回は、「先週、原油相場は記録的な乱高下」として、主要銘柄のスエズ運河座礁事故発生後の変動率をランキング形式で確認しました。

今回は、「スエズ運河事故起因の供給不安は“川中型”」として、前回に関連し、スエズ運河座礁事故発生後、原油相場が他の主要銘柄を上回る高い変動率を伴ったレンジ相場で推移した背景について、筆者の考えを書きます。

原油や貴金属、穀物などの資源や一次産品などと呼ばれるものが生産者の手を離れ、ガソリンや指輪、パスタなどの最終商品となって消費者の手に届くまでの流れを、川の流れに例え、川上・川中・川下と、表現することがあります。

以下の資料通り、今回のスエズ運河での事故は“川中”で発生した出来事であることがわかります。今回の供給不安は、油田の爆発や鉱山労働者のストライキ、天候不順による不作などをきっかけとした供給不安ではありません。また、中国の旺盛な需要やイベントやブームを背景とした需要増加をきっかけとした供給不安でもありません。

川中部門での障害は、川上部門での“モノ余り”と川下部門での“モノ不足”を同時に引き起こします。今回のスエズ運河の件で、例えばサウジなどの主要産油国で“モノ余り”が起きたり(下落要因)、オランダのロッテルダム港周辺で石油製品の在庫が減少したりする可能性がある(上昇要因)、ということです。

高い変動率を伴ったレンジ相場が発生したのは、同時に発生した上昇要因と下落要因に市場がどう反応すればよいか決めあぐねたことが一因に挙げられると、筆者は考えています。

図:サプライチェーン(供給網)のイメージ


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。