週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.09ドル高の61.45ドル、ブレント原油は同2.19ドル高の64.86ドルとなった。

 前週末の海外原油は、スエズ運河の閉鎖が長引き、数週間にわたって物流が滞る可能性があると報じられたことから供給懸念が高まり堅調な推移となった。また、米国でワクチン接種が順調に進んでおり、景気回復への期待感が高まっていることから株高推移したことも支えとなった。

 先週は、先週に引き続きレンジ相場が継続し方向感のない展開となった。週明け29日はスエズ運河の座礁船が岸から離れ、正常な運航が可能になったと伝わったことは上値を抑えたものの、1日に行われるOPECプラス会合において4月に続き5月も減産が継続されるとの期待感が支えとなり堅調な推移となった。翌日は反落、米長期金利が約1年2か月振りの高水準まで上昇したことからドル高進行していることが重しとなった。また、引き続き欧州でコロナが再拡大していることも嫌気された。月末31日は、フランスで3回目となるロックダウン延長が決定するなど欧州を中心にコロナウィルスが再流行していることが嫌気され続落。またOPECプラスが2021年の石油需要見通しを引き下げたことも重しとなった。注目のOPECプラス会合では、段階的な増産が決定したものの、石油需要回復への自信の表れとの見方から売りは続かず、ドル高が一服したことや米石油製品需要の堅調さなどが好感され上昇する展開となった。OPECプラスが5・6月に日量35万B、7月に日量40万B程度増産することで合意したほか、サウジアラビアは5月に25万B、6月に35万B、7月に40万B増産して自主減産を終了する見通しを示した。ただし、欧米の良好な経済指標から過度な供給過剰への警戒感が後退したことや、段階的な減産縮小だったことから売り一巡後は買い戻しが入って反発した。



 欧州を中心とした新型コロナウィルスの再拡大が懸念が根強いなか、1日開催のOPECプラス会合は、段階的に増産(減産幅を縮小)することで合意となった。減産幅の現行維持予測もあった中で、原油相場は乱高下しながらもプラス引けしており、ここから、ファンドの買い意欲が改めて強まるのかが焦点になりそうだ。年後半には需要が回復に向かうとの期待感から下値はある程度底堅そうであり、増産のインパクトはあるものの、目先はレンジ継続~やや上方向の展開が想定されそうか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。