[Vol.972] 商品市場の密になってはいけない過去の常識

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。59.29ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,745.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,970元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。0年0月限は383.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで511.55ドル(前日比1.85ドル拡大)、円建てで1,819円(前日比15円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月8日 19時28分頃 先限)
6,138円/g 白金 4,319円/g
ゴム 241.1円/kg とうもろこし 31,850円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「商品市場の密になってはいけない過去の常識」

前回は、「後戻りできない社会の変化と市場の常識」として、社会の大規模な変化と、教科書通りにしばしば市場が動かないことの関係について書きました。

今回は、「商品市場の密になってはいけない過去の常識」として、商品市場に古くから言い伝えられている、今となっては執着してはいけない、過去の常識について書きます。

過去の常識に執着しないことは、人生、そして市場と向き合うために必要だと筆者は考えています。以下は、密になってはいけない、具体的なコモディティ(商品)市場の過去の常識です。

過去の常識の共通点は、A→Bのように、材料を点で見ることです。以下の、金、プラチナ、原油、いずれもAが起きればBという価格推移になる、というものでしたが、前回のとおり、市場を含む社会全体は、大きく変化したため(しているため)、現在のこれらの市場の価格推移は、単一の事象で説明できるような、単純なものではなくなっています。

金(ゴールド)に関する情報を見た時、仮に“有事で金価格が上昇している”という解説を見たとしても、それ(有事)が金相場の全てではない、それ(有事)だけで金相場は動いていない、と認識できるようになればしめたものです。

金相場には、少なくとも6つ、テーマがあると考えられます。有事はその中の一つに過ぎません。株との関係も、ドルとの関係も、そうです。短中期的(数秒から数カ月)には、①有事のムード(不安心理)、②代替資産(株の代わり)、③代替通貨(ドルの代わり)の3つが、長期的(数カ月から数十年間)には④新興国の宝飾需要、⑤中央銀行、⑥鉱山会社の3つが影響し、金価格が決まっていると考えてよいと思います。

図:金・プラチナ・原油市場の過去の常識と現在


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。