[Vol.981] 中国『一帯一路』は進行中

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。62.02ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,779.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,910元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年06月限は402.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで586.8ドル(前日比4.7ドル拡大)、円建てで2,043円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月21日 18時26分頃 先限)
6,188円/g 白金 4,145円/g
ゴム 232.0円/kg とうもろこし 32,800円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「中国『一帯一路』は進行中」

前回は、「イランは今、『核合意』で揺れている」として、「イラン核合意」のこれまでの経緯と現在の状況について書きました。

今回は、「中国『一帯一路』は進行中」として、中東と中国の『一帯一路』の現状について書きます。

前回書いたとおり、イランは今、「核合意」で揺れており、中東情勢が不安定化しつつあります。こうした中、状況をさらに複雑にしているのが、中国の存在と今年の複数の重要イベントです。

中国の習近平国家主席が2013年に提唱した『一帯一路』構想では、イランは非常に重要な位置にあります。6月のイラン大統領選挙で反米色が強い保守強硬派が勝利し、イランの中国傾斜が強まるきっかけができ、かつ、9月の米兵のアフガニスタンからの撤退が予定どおり行われれば、『一帯一路』構想における中国・中央アジア・西アジア回廊の完成はさらに現実的になるでしょう。

現在イランの一般大衆の間では、核合意を離脱し、独自に制裁を課している米国への反発心が強まっています。また、合意を結んだ当事者であるロウハニ大統領への風当たりが強くなっています。このため、ロウハニ大統領の再選は厳しく、イラン社会がどんどんと保守的で強硬的になるとの指摘もあります。

9月の米兵のアフガニスタン撤退が予定通り行われれば、さらにイランとイラン周辺から、米国色が小さくなることが予想されます。そしてそこに付け入るように、さらに存在感を増すのが、中国です。イランとアフガニスタン一帯が中国の息がかかった地域になれば、『一帯一路』構想はさらに現実的になります。

また、報道では、中国はすでに、イランだけでなく、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンなどといった、ペルシャ湾やオマーン湾という原油供給の大動脈に沿った国々の港湾施設の利用権を有しているとされています。「中東の中国傾斜」はじわじわと進行しており、今年6月のイラン大統領選挙と9月の米兵のアフガニスタン撤退が、それに拍車をかける可能性があります。

さらに、中国に傾斜したイランが核兵器を持った場合、イラン、その西にイスラエル、東にパキスタン、インド、そして中国、北にロシアと、核保有国の密集度が上昇することになります。現在、核保有国に囲まれていることが、イランを核保有に走らせる一因になっていると考えられますが、パワーバランスを均衡させるために新たなパワーを持つという考え方は、世界全体でみれば決して好ましいことではありません。

図:一帯一路構想(六大回廊)


出所:各種情報源より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。