[Vol.1005] 金は今「代替通貨」として注目されている

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。67.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,906.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,400元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年07月限は428.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで717.25ドル(前日比5.65ドル縮小)、円建てで2,522円(前日比6円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月31日 19時5分頃 先限)
6,723円/g 白金 4,201円/g
ゴム 247.1円/kg とうもろこし 34,000円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金は今「代替通貨」として注目されている」

前回は、「金価格上昇要素「有事のムード」は継続か」として、年内の金相場の動向を考える上で重要とみられる、3つのテーマの1つ、「有事のムード」について述べました。

今回は、「金は今「代替通貨」として注目されている」として、年内の金相場の動向を考える上で重要とみられる、3つのテーマの1つ、「有事のムード」について述べます。

以下のグラフは、金価格および、「代替資産」や「代替通貨」に関連する米10年債利回り、ドル指数、ビットコイン、NYダウの推移を示しています。足元の金価格が「何の代替(何の代わり)」で動いているのかがわかります。

上図より、足元、金(ゴールド)は「代替通貨」として注目を集めていると言えます。長期金利の目安になる米10年債利回りの上昇の頭打ち、ドル指数の下落、代替通貨で競合する性格を持つビットコインの下落と歩調を合わせるようにして、金価格が上昇しています。これはまさに、金がドルの代わり「代替通貨」として注目されている証と言えます。

現在、米国の金融緩和の最中であるため、以前の「不況時の株高・金高の具体例」 で述べたとおり「株高・金高」が発生しやすい状況にあります。このため、株の代わりである「代替資産」という側面では、注目は集まっていないように感じます。

一口に「代替」と言っても、金は、「代替通貨(ざっくり言えばドルの代わり)」にも「代替資産(ざっくり言えば株の代わり)」にもなり得ます。金相場の今後の動向を考えるためには、その時、金がどちらの「代替」として注目されているのか(もしくはいずれの代替でないか)に注目しなければなりません。

いずれにせよ、金(ゴールド)相場だけを見ていては、何の代替なのか(そうでないのか)はわかりません。「材料を俯瞰する」という基本を忠実に守ることが重要です。

図:金価格と米10年債利回り、ドル指数、ビットコイン、NYダウの推移


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。