[Vol.1011] 原油相場と石油開発会社の株価は連動する?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.91ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,895.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,045元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年07月限は443.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで729.4ドル(前日比5.4ドル拡大)、円建てで2,545円(前日比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月8日 18時21分頃 先限)
6,664円/g 白金 4,119円/g
ゴム 239.3円/kg とうもろこし 36,460円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油相場と石油開発会社の株価は連動する?」

前回は、「原油相場上昇の主因は、米国の生産力低下か」として、原油相場が2018年10月以来の水準となる、1バレル70ドルに達した背景について書きました。

今回は、「原油相場と石油開発会社の株価は連動する?」として、原油相場と石油開発会社の株価の関係について書きます。

基本的に、採掘コストが変わらなければ、原油相場の上昇は、石油開発会社の株価の上昇要因です。採掘した原油を販売する際の単価上昇を意味し、収益が増加する期待が高まるためです。このため、一定程度、原油相場と石油開発会社の株価は連動性が生じる傾向があります。

しかし、5月下旬、原油価格が上昇し、石油開発会社(代表格であるエクソンモービル社)の株価が下落し、一時的に2つの連動性が低下しました。連動性の低下は、石油開発会社側で固有の要因が発生している時に起き得ます。

オーストラリアの非営利団体「ミンダルー財団」が5月に公表した「使い捨てプラスチック関連企業・機関」が、影響している可能性があります。このリストに載った企業は、ざっくり言えば、環境配慮により積極的にまい進しなければならない企業です。

世界中で深刻化するプラスチックごみによる海洋などの汚染を食い止めるには、ペットボトルやビニル袋などの利用はもちろん、原料となる石油製品の一つであるポリマーの製造をやめることが有効と考えられます。

同財団の資料には、原油を掘削したり石油製品を製造したりしている石油開発会社や、その企業に出資している企業、融資している金融機関名が書かれています。各部門100位まで、ランキング化してあります。

「今のところ」、プラスチック製品は一定程度、豊かな暮らしを継続するために貢献していると考えられます。しかし今後、環境を守るためには、一般市民も、そしてプラスチック製品に直接かかわる企業も機関も、環境問題を直視し、製造および使用する量を減らしていかなくてはなりません。

5月、エクソンモービル社の取締役のポストに「物言う株主」が選出されたと報じられました。使い捨てプラスチックの撲滅を含む、環境にやさしい企業へと生まれ変わるべく、大きな一歩を踏み出したのかもしれません。

環境配慮が叫ばれる中、注意が必要な企業や機関の実名が公表されたり、石油開発会社のポストに「物言う株主」が選出されたり、具体的な動きが出始めています。これまでの「原油相場と石油関連開発会社の株価は連動する」という、過去の常識が否定されることが当たり前になるかもしれません。今後の石油開発会社の株価と原油相場の動きに注目です。

図:主要な使い捨てプラスチック関連企業・機関(2019年)


出所:「ミンダルー財団」の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。