[Vol.1017] 世界の石油需要動向は「期待」「願望」先行

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.30ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反発などで。1,861.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は12,750元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年08月限は461.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで712.7ドル(前日比4.9ドル拡大)、円建てで2,499円(前日比8円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月16日 18時53分頃 先限)
6,564円/g 白金 4,065円/g
ゴム 235.3円/kg とうもろこし 34,270円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「世界の石油需要動向は「期待」「願望」先行」

前回は、「「脱炭素」でもささやかれる原油相場100ドル」として、「脱炭素」が叫ばれる中で報じられている「原油相場100ドル」について考えを深めるべく、現在の原油相場の値位置を確認しました。

今回は、「世界の石油需要動向は「期待」「願望」先行」として、足元、報じられている「原油相場100ドル」について、需要動向の面から考察します。

報道を参照すると、足元の原油相場の上昇は、コロナ禍からの景気回復や季節的な要因による需要増加、そして産油国の生産削減、などが主な要因とされています。以下は、世界の石油需要の推移です。

世界の石油の需要は、新型コロナのパンデミック化後の数カ月間、減少し、報じられているとおり、回復傾向にあります。このため、回復しているか? と問われれば、「している」と回答できます。

ただ、その規模はどうでしょうか。回復しているものの、まだコロナ前の水準に回復しておらず、途上です。さらには昨年同時期に出された予想を下回っています。

これらを考慮すれば、「回復」といえども、世界の石油需要の動向に関する評価は、「美点凝視」、「よいところ取り」、つまり、「期待先行」「願望先行」と言えるでしょう。実は同様のことが、銅でも起きています。世界の銅需要もまだコロナ前の水準に回復していません。

データを見る限り、石油や銅市場に、報じられているような、需要が急激に回復していることをうかがわせる過熱感は、存在しません。あるのは、将来、急激に回復しそうであるという「期待」や「願望」です。つまり、石油の需要の回復がイメージどおりでなくても、「期待」や「願望」があれば、価格は上昇し得るのです。次回以降、供給面について書きます。

図:世界の石油需要 単位:百万バレル/日量


出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。