[Vol.1018] 米国の原油生産減、OPECプラスの減産続

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。71.80ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,807.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は12,780元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年08月限は457.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで694.65ドル(前日比24.85ドル縮小)、円建てで2,458円(前日比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月17日 17時23分頃 先限)
6,435円/g 白金 3,977円/g
ゴム 235.0円/kg とうもろこし 33,800円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米国の原油生産減、OPECプラスの減産続く」

前回は、「世界の石油需要動向は「期待」「願望」先行」として、足元、報じられている「原油相場100ドル」説について、需要動向の面から考察しました。

今回は、「米国の原油生産減、OPECプラスの減産続く」として、「原油相場100ドル」説について、さらに考えを深めるべく、今度は供給動向の面から考察します。

以下のグラフは、世界のトップ3である米国、ロシア、サウジの原油生産量(石油製品の供給量ではない)推移です。いずれも、2020年春以降、減少していることがわかります。

米国の原油生産量が減少し、その後も回復していないのは、新型コロナショック時の原油相場急落によって米国の複数のシェール業者が破綻し、生産力が回復していないためです。

では、OPECプラス(サウジやイラクなどのOPEC:石油輸出国機構 加盟国13カ国と、ロシアやカザフスタンなどの非OPECの主要産油国10カ国、合計23カ国の産油国の組織)に属している、世界2位と3位の原油生産国であるロシアとサウジの原油生産量が減少しているのはなぜでしょうか。

ロシアとサウジの生産量が減少しているのは、人為的な生産調整、いわゆる「減産」を再開したためです。2020年3月をもって一時中断したOPECプラスの減産は、同年4月の複数回の会合を経て、5月より規模を大幅に拡大して再開しました。

足元、ロシアの原油生産量がわずかに増加しているのは、減産の合意内容に、上限引き上げが盛り込まれているため、サウジの原油生産量が減少しているのは、自主減産(減産の合意内容以上の減産)を実施しているためです。

2020年春以降、3カ国、いずれも原油生産量が減少しているわけですが、米国とOPECプラスに属するロシア・サウジとではその理由が異なるわけです。

今後について、米国の原油生産量は、シェールの開発関連指標の回復が鈍いため、すぐさま回復するとは考えにくく、OPECプラスの減産は、規模を段階的に縮小するとはいえ、2020年4月に合意した内容どおりであれば、2022年4月まで続くことから、目先は当面、世界のおよそ半分(※)を占めるこの3カ国からの原油生産量は、大きく増加する可能性は低いと考えられます。※49.8%。JODIのデータより。2020年12月時点。

コロナ禍にあり、需要回復のニュースが選好されやすいこともあり、「期待先行」であれ「願望先行」であれ「美点凝視」であれ、需要増加が原油相場を押し上げている、という文脈で語られることが多いですが、世界3大原油生産国からの供給減少という供給面の要因の方が、実態を伴っている分、強く、原油相場に影響していると筆者は考えています。

図:米国・ロシア・サウジの原油生産量 単位:千バレル/日量


出所:JODI(Joint Organisations Data Initiative)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。