[Vol.1019] 原油市場、「ゲタ」脱げた!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。70.83ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,793.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は12,795元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年08月限は442.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで714.75ドル(前日比4.85ドル縮小)、円建てで2,517円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月18日 18時24分頃 先限)
6,345円/g 白金 3,828円/g
ゴム 234.4円/kg とうもろこし 33,230円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油市場、「ゲタ」脱げた!?」

前回は、「米国の原油生産減、OPECプラスの減産続く」として、「原油相場100ドル」説についてさらに考えを深めるべく、供給動向の面から考察しました。

今回は、「原油市場、「ゲタ」脱げた!?」として、原油相場が、今週行われたFOMCで米国で早期に利上げが実施される可能性が示されたことを機に、下落したことについて書きます。

以下の図は、主要株価指数や通貨、金利などの他の市場を含んだ「全体」の動向と、コモディティ市場のカテゴリごとの「個別」の動向を示したものです。

コロナ禍にあり、景気回復を示唆するニュースが受け入れられやすい環境にあるため、データが示す実態がなくても、「全体的な将来の良いところ」を材料に、景気動向に敏感な投資対象(主要株価指数や原油や銅など)の価格が上昇するケースが散見されました。

ここで言う「全体的な将来の良いところ」とは、中国の景気回復やワクチンの流通、各種需要の回復(一部では需給ひっ迫との報道も)、そして景気回復・株高の原動力とも言える主要国の金融緩和が作り出す、好ムード(リスク・オンのムード)です。

拡大・増幅した「全体的な将来の良いところ」は、コモディティ(商品)価格の底上げに、一定程度、貢献してきたわけですが、早期利上げが示された今週のFOMCをきっかけに、「全体的な将来の良いところ」の一翼を担ってきた金融緩和起因の上昇圧力が低下しました。

これまで、企業や個人の資金調達を有利にして景気回復の原動力となってきた、金融緩和の具体策一つである低金利策が早期に終了する可能性が生じたことで、金融緩和起因の上昇圧力が低下し、株式市場や原油市場などが不安定化していると、考えられます。

まるで、履いていた「ゲタ」を脱がされたかのようです。引き続き、FRBの動向に注視することが必要です。

図:足元の「全体」の中のコモディティ市場(イメージ)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。