[Vol.1020] テーパリングは、「徐々に細くすること」の意

著者:吉田 哲
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今回は、「テーパリングは、「徐々に細くすること」の意」として、米国における金融緩和の現状と、先週16日(水)のFOMC後の会見前後の主要銘柄の値動きについて書きます。

原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.36ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,776.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は12,630元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年08月限は452.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで743.8ドル(前日比11.45ドル拡大)、円建てで2,650円(前日比126円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月21日 大引け 先限)
6,280円/g 白金 3,630円/g
ゴム 232.4円/kg とうもろこし 33,390円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「テーパリングは、「徐々に細くすること」の意」

前回は、「原油市場、「ゲタ」脱げた!?」として、原油相場が先週行われたFOMCで、米国で早期に利上げが実施される可能性が示されたことを機に、下落したことについて書きました。

今回は、「テーパリングは、「徐々に細くすること」の意」として、米国における金融緩和の現状と、先週16日(水)のFOMC後の会見前後の主要銘柄の値動きについて書きます。

報じられているとおり、先週6月16日(水)、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、コロナ禍で米国経済が負ったダメージを回復させることを目的として行ってきた大規模資産購入を段階的に縮小させる議論(テーパリングの議論)がはじまりつつあることと、そして、同じ目的で実施してきた、政策金利の誘導目標をゼロ近辺に据え置く策(ゼロ金利政策)をやめることを示唆しました。

テーパリング(Tapering)は、徐々に細くする、を意味する「Taper」の動名詞(ing形 意味は徐々に細くすること)で、金融政策関連の用語として使われる時は、中央銀行(米国であればFRB、日本であれば日銀。銀行の銀行とよばれる存在)が、自らが実施している金融緩和策における資産購入の規模を徐々に縮小することを意味します。

新型コロナがパンデミック化した昨年3月以降、FRBは大規模な資産購入を開始し、社会に毎月多額の資金を供給しはじめました。(これが投機マネーや緩和マネーなどと呼ばれ、各種コモディティ銘柄や主要株価指数などの上昇の一因となりました。「金融緩和の副作用」などと言われます)

また、資産購入と同じ緩和的措置の意味を持つゼロ金利利策は、昨年3月に4年ぶりに「ゼロ」に移行して以来、現在も継続しています。FRBは政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%に据え置いています。

FRBは、新型コロナがパンデミック化して以来、コロナ禍で米国経済が負ったダメージを回復させるべく、大規模資産購入とゼロ金利政策を行ってきました。資産購入による資金供給やゼロ金利策によって、企業や個人が資金調達をしやすくなり、経済回復を実現できると考えたためです。

そうした中、先週のFOMCで、大規模資産購入をやめる(テーパリングを始める)議論を始めること、来年にも利上げをすることが示唆されました。FRBが雇用情勢とともに重視する物価動向を示す指標が大きく上昇し、景気回復が叫ばれ始めたためです。

市場はこれまで享受してきた金融緩和策による恩恵がなくなってしまうことを嫌気し、幅広い銘柄が下落しました。以下の図はFOMC会見前日の6月15日(火)と会見から2日たった18日(金)の、主要銘柄の騰落率です。次回以降、FOMCが与えたコモディティ市場への影響について書きます。

図:FOMC直後の主要銘柄の騰落率(21年6月15日~18日)


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。