[Vol.1025] 「金価格、上がるべき」という謎の自信

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。73.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,778.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,150元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年08月限は463.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで673.1ドル(前日比1ドル拡大)、円建てで2,406円(前日比10円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月28日 19時26分頃 先限)
6,323円/g 白金 3,917円/g
ゴム 236.2円/kg とうもろこし 33,280円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「金価格、上がるべき」という謎の自信」

前回は、「コモディティ「全体」としては上昇継続か」として、今後のコモディティ市場のおおまかな展開について、筆者の考えを述べました。

今回は、「「金価格、上がるべき」という謎の自信」として、金相場に対するイメージと実際の価格動向の不整合について書きます。

「なぜ金価格が下がっているの?」金価格が下落していると、社内でしばしばこの質問を受けます。たいていその時、質問者は「金価格が上昇するべきだか、下がっている。なぜなのか・・・?」という、イメージと価格動向の不整合に苛まれています。

「こんなに有事なのに、なんで金は下がっているんだ!?」とやんわりと語気を荒げる人や、この金価格の下落に一言もの申す!的な雰囲気を帯びている人は珍しくありません。むしろ、このような方の方が多いくらいです。(筆者としては全く問題なく、むしろ大歓迎です)

質問者の多くは自信満々なのです。頭の中に「金価格が上昇するときはこんな時だ。間違いない」という、ゆるぎないイメージ(自信)を持っています。そこまで金相場に強い思い入れを抱いていただいているとは、非常に心強い話なのですが、それにしても、そのゆるぎない自信を獲得したのはいつだったのだろうか?とふと、考えさせられます。

あからさまな「有事=金価格上昇」が発生した1970年代後半でしょうか?主要国で不動産や株式市場でバブル崩壊が散見された1980代後半から1990年代後半にかけてでしょうか?少なくとも材料の多層化が顕在化したこの10年以内ではないでしょう。やはり、「有事と言えば金高」、「株安と言えば金高」などが合言葉だった30年~40年前なのではないでしょうか。

次回以降、「現代の」金相場を考える上で欠かせない「鳥の目」について書きます。

図:金の価格推移 単位:ドル/トロイオンス


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。