[Vol.2036] 「悪魔の選択」「禁じられた投資」の意味

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。62.01ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,383.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年10月限は484.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2029.35ドル(前日比11.65ドル縮小)、円建てで10,091円(前日比35円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月19日 17時47分時点 6番限)
15,998円/g
白金 5,907円/g
ゴム 318.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 日足 単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『悪魔の選択』『禁じられた投資』」の意味
前回は、「金(ゴールド)、一時、最高値更新」として、海外金(ゴールド)現物価格と国内地金大手小売価格の推移を確認しました。

今回は、「『悪魔の選択』『禁じられた投資』」の意味として、金(ゴールド)投資を巡る悪魔の選択と冷静な投資について、確認します。

金融業界の一部では、戦争などの不安を強くかき立てる有事は、金(ゴールド)を買うきっかけになると認識されています。いわゆる「有事の金買い」です。1970年代後半に中東で複数の有事が発生した際に、金(ゴールド)相場が高騰したことが「有事の金買い」のシナリオの根拠になっています。

一方で、有事の金買いは「悪魔の選択」との指摘もあります。日本の金(ゴールド)の第一人者(大変に著名な方です)は、「あくまで、資産運用の主役は株式であり、金(ゴールド)は脇役」「有事に金(ゴールド)を大量買いすることは悪魔の選択」という趣旨のコメントをされています。

ポイントは「脇役」「大量買い」だと思われます。金(ゴールド)に投資をするのであれば、有事を報じるニュースをきっかけに一度に大量に買うのではなく、あくまで脇役であることに留意しつつ、普段から少量ずつ買い続けていることが望ましい、と指摘されているのだと筆者は受け止めています。

その意味で、筆者はこの指摘に賛成の立場です。有事を報じるニュースに盲目的になりやすい人々をいさめる、鋭い指摘だと感じます。なぜ、多くの人は、有事発生時に盲目的になりやすいのでしょうか。それは、有事が「分かりやすい恐怖」だからです。

恐怖は危機を回避したいという欲求を大きくします。分かりやすさは迅速な決定を促します。そこに、1970年代後半の有事多発・金(ゴールド)相場高騰という実例が加われば、「有事の金(ゴールド)の大量買い」が起きやすくなることは、ごく自然なことです。

ただ、「盲目的」であることは、大いに注意すべきことです。投資は投資家の判断で行われ、それによって生じた結果は(利益も損失も)、投資家が受け入れるためです。投資の世界にいる金融関係者も投資家も、できるだけ深い思考が必要なのです。盲目的な状態でのさまざまな活動は、できるだけ避けるべきであると、筆者は考えています。

「盲目的に、有事発生時に、金(ゴールド)を大量に買う行為」は、悪魔の選択だと言えます。語気を強め、誤解を恐れず言葉にすれば、そうした行為は、禁じられた投資、「金投資」ならぬ「禁投資」とさえ、言えるのかもしれません。

金(ゴールド)投資をそうした投資にしないための簡単な方法があります。筆者が提唱する「七つのテーマ」に準じることです。この「七つのテーマ」に準じることで、現代の金(ゴールド)市場の仕組みを簡単に理解できます。

さらに、そこで得られた知識は、純金積立や投資信託、関連上場投資信託(ETF)・個別株、商品先物、商品差金決済取引(CFD)などの買い方を選択する際の大きな助けにもなります。「七つのテーマ」への理解を深めるために、まずは一つ、問いを立ててみます。次回以降、詳細を述べます。

図:金(ゴールド)投資を巡る悪魔の選択と冷静な投資

出所:日本の金の第一人者のコメントを参考に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。