[Vol.1028] 隣の芝生の青さが、金・プラチナ投資のヒント[2]

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。74.16ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ビットコインの反落などで。1,775.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は12,705元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年08月限は459.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで691.3ドル(前日比7.4ドル縮小)、円建てで2,479円(前日比43円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月1日 18時59分頃 先限)
6,356円/g 白金 3,877円/g
ゴム 220.1円/kg とうもろこし 36,240円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「隣の芝生の青さが、金・プラチナ投資のヒント[2]」

前回は、「隣の芝生の青さが、金・プラチナ投資のヒント[1]」として、金とプラチナの投資戦略を練る上で考慮したい、この数カ月間の日本の個人投資家の心理状態について書きました。

今回は、「隣の芝生の青さが、金・プラチナ投資のヒント[2]」として、前回の続編を書きます。

前回、当社で毎月実施している、個人投資家の皆さまにさまざまな質問にお答えいただく投資家サーベイ「楽天DI」の5月の調査における、質問「今後投資してみたい国(地域)」の結果において、「アメリカ」を選択した人の割合が73%で高位維持、「日本」を選択した人の割合が30%に低下したと、書きました。

この数カ月間目立っている「アメリカ上昇・日本低下」の背景について、この数カ月間、という期間的な要素をもとに考えたとき、筆者の頭の中に、あるアイデアが浮かびました。この数カ月間、アメリカ優位・日本劣位が鮮明になっているのは、ワクチンの接種率です。

以下は、Our World in Dataが公表しているデータを用いて計算した、ワクチン接種率です。少なくとも1回、新型コロナのワクチンを接種した人の数をその国の人口で除した値です。2021年6月24日(木)時点で、アメリカが54%、世界全体が23%、日本が20%、インドが18%でした。

ワクチン接種率は、人々の安心感と景気回復期待を増幅させる、さながら「安心感・景気回復期待増幅器」と言えます。足元、この増幅器が期待通り効率よく稼働しているか、そうでないかが、質問「今後投資してみたい国・地域」の結果を左右する一因になっていると、筆者は考えています。

「人々の安心感」という点で言えば、ワクチン接種率が比較的高いためアメリカでは、人々の間で安心感が広がりやすく、そうでない日本は相対的に安心感が広がりにくい(むしろアメリカに後れをとっているという意識によって不安感が広がりかねない)、と言えるでしょう。

また、「景気回復期待」という点で言えば、ワクチン接種率が比較的高いためアメリカでは、景気回復期待増→株価上振れという構図になりやすく、米国株の動向に追随する傾向がある日本の株価も上振れする可能性があると考えられます。(ワクチン接種率の相対的な低さが、日本の株価下落の要因にはならないと、筆者は考えています)

このように考えれば、日本の個人投資家の皆さまは今後も、「一定の不安を抱えながら、株価上昇の恩恵を享受する」可能性があると言えます。不安と株価上昇、この2点が同時に存在する時だからこそ、金とプラチナを両方保有する投資戦略が活きると、筆者は考えています。

次回以降、金とプラチナの過去の値動きに触れながら、金とプラチナを両方保有する投資戦略の留意点について書きます。

図:ワクチン接種率 (少なくとも1回接種した人)


出所:Our World in Dataのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。