[Vol.1033] OPECプラス、世論を味方に限定的増産を画策か?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。72.09ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,797.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,290元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年08月限は440.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで725.4ドル(前日比8.2ドル拡大)、円建てで2,583円(前日比46円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月8日 12時42分頃 先限)
6,391円/g 白金 3,808円/g
ゴム 217.8円/kg とうもろこし 33,870円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OPECプラス、世論を味方に限定的増産を画策か?」

前回は、「世界の石油消費は「7割経済」の最中」として、新型コロナがパンデミック化した昨年3月から先週までの1年4カ月間を含む、およそ3年間の、世界の石油消費量について書きました。

今回は、「OPECプラス、世論を味方に限定的増産を画策か?」として、OPECプラスの体制、および近年のOPECプラスの原油生産量の推移と今後の動向について書きます。

OPECプラスとは、サウジアラビアやイラン、イラクなど13の産油国の集団であるOPEC(石油輸出国機構)と、ロシアやカザフスタン、マレーシアなどOPECに加盟していない10の主要産油国の合計23カ国で構成されます。(2021年7月現在)

OPECプラスは、彼ら自身を「DOC:the Declaration of Cooperation(協力宣言)」と銘打って、結束力の強さをアピールしています。DOCの始まりは、現在の協調減産(2017年1月に開始。2020年4月のみ一時中断)を実施することで合意した、2016年12月のOPEC・非OPEC閣僚会議とされています。

OPECプラスは、減産の規模(削減量)の調整や減産期間の延長を繰り返してきたわけですが、この間、減産に参加する国が入れ替わることもありました(エクアドルやカタールのOPEC脱退、非OPECとして減産に参加していた赤道ギニアのOPEC加入など)。

また、協調減産開始後、常に減産免除国が存在してきました。現在は、イラン、ベネズエラ、リビアの3つのOPEC加盟国が減産免除国です。つまり、OPECプラスは23カ国ですが、厳密には、減産に参加しているのは20カ国です。

以下のグラフは、その20カ国の原油生産用の合計の推移です。2020年5月に減産を再開した際、急減しました。削減量を大幅に拡大させた(生産量の上限を大幅に引き下げた)ためです。

8月以降の削減量(それによって決まる生産量の上限)は、7月5日(月)に延期された第18回OPEC・非OPEC閣僚会議が中止になったため、決まっておらず、異例中の異例の事態にあります。

今後、コロナで負ったダメージが回復するとの見通しを根拠に、世界の石油消費量が増加することが予想されているため、その増加する消費を賄うため、生産量を増加させる必要があると、OPECプラスは考えてるようです。

このためOPECプラスは今後も徐々に、削減量を減らす(生産量の上限を引き上げる)ことが予想されます。

これは生産量の増加であり、原油相場にとって下落圧力を発生させる要因になり得ますが、世界の石油の消費量の増加見通しに比べれば、規模が小さいため、OPECプラスの原油生産量の増加が、世界の石油の需給バランスを緩める要因にはならない、つまり原油相場を下落させる要因にならないと、筆者は考えています。

次回以降、世界の石油消費量について書きます。

図:OPECプラスの原油生産量(減産実施20カ国) 単位:千バレル/日量


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。