[Vol.1049] 金(ゴールド)は人類を魅了し続けてきた

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.83ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,812.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,325元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年09月限は435.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで764.05ドル(前日比1.85ドル縮小)、円建てで2,653円(前日比10円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月3日 18時52分頃 先限)
6,350円/g 白金 3,697円/g
ゴム 215.1円/kg とうもろこし 34,300円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)は人類を魅了し続けてきた」

前回は、「五輪は「多様性」を紡ぐことの重要性を教えてくれている」として、直近の過去4回で述べた、夏季五輪に係る各種データから、金(ゴールド)相場を分析する際のアイディアを練る上での、筆者が考えるポイントを述べました。

今回は、「金(ゴールド)は人類を魅了し続けてきた」として、人類が有史以来、どのような分野に金を用いてきたのかについて、書きます。

金(ゴールド)は、いつの時代も、さまざまな意味で、人類に影響を及ぼしてきました。ピラミッドや古墳などの大昔の有力者の墓からは、金(ゴールド)を用いた宝飾品が見つかっています。

墓に魅惑の輝きを放つ宝飾品が収められていることは、埋葬された人が生前、大きな権力を有していたことを示しています。死後の世界でも、権力を振るえるよう、墓に宝飾品が収められた、との説もあります。金(ゴールド)が権力の象徴である例です。

以下のグラフは、有史以来、これまでに人類が生産した金(ゴールド)が、どの分野に使われているのかを示しています。統計では「地上在庫」とされています。

金(ゴールド)の宝飾品は、権力の誇示だけでなく、保有者の気分を高揚させたり、安堵(あんど)させたりする効果があります。長い歴史の中で、人類はこうした効果を求めて、採掘した金(ゴールド)の半分弱を宝飾品にしました。

宝飾品に次いで割合が大きいのが、投資用です。内訳は、20%が地金(じがね)やバー、2%が金(ゴールド)を株式のように機動的に売買できるように作られた金融商品ETF(上場投資信託)の裏付けです。ETFが売れれば売れた分だけ、指定された金融機関に金(ゴールド)が積み上がる仕組みです。

次は公的機関の保有です。割合は17%です。ここで言う公的機関とは、各国にある銀行の銀行と呼ばれる「中央銀行」と「IMF(国際通貨基金)」です。後述する「金市場の自由化」後も、米国をはじめとした主要国の中央銀行は、金(ゴールド)の保有を維持しています。

また、近年は、何かあった時への備えとして積み上げている外貨準備として、金(ゴールド)の保有量を増やす国(中央銀行)が増えています。

その他加工用などは15%です。伸ばしやすい(加工しやすい)、電気を通しやすい、さびない、などは、金(ゴールド 元素記号Au)の物質としての特徴です。こうした特徴が買われ、金は電子製品に幅広く用いられています。

電子製品が広く用いられている国や地域を「都市鉱山」と呼ぶことがあります。また、工業的な用途に加え、金は生物の体と親和性が比較的高いとされ、入れ歯などの歯科用の金属としても用いられています。次回以降、金(ゴールド)と人類の付き合いが長い理由について書きます。

図:これまで人類が生産した金(ゴールド)の使い道


出所:Gold Hubのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。