[Vol.1050] 金(ゴールド)にはどのような魅力があるのか?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。70.56ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,814.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,505元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年09月限は436.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで774.55ドル(前日比7.35ドル拡大)、円建てで2,696円(前日比19円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月4日 18時1分頃 先限)
6,371円/g 白金 3,675円/g
ゴム 217.8円/kg とうもろこし 34,100円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)にはどのような魅力があるのか?」

前回は、「金(ゴールド)は人類を魅了し続けてきた」として、人類が有史以来、どのような分野に金を用いてきたのかについて、書きました。

今回は、「金(ゴールド)にはどのような魅力があるのか?」として、人類が有史以来、長きに渡り人類が付き合ってきた金(ゴールド)に、どのような魅力があるのかについて、書きます。

金(ゴールド)と人類の付き合いについて考える際、金が持つ物質的側面に注目しなければなりません。金の融点(熱した時に溶解する時の温度)は、およそ1,064℃です(銅の1,084度に近い)。

金属を加工する際、何かを熱して高温の環境をつくり出す技術が必要ですが、融点が鉄(1,538度)やプラチナ(1,768度)よりも低いことは、古代エジプトや古墳時代の日本でも、金(ゴールド)を加工することを可能にしたと考えられます。

人類が、「早くから金(ゴールド)を加工するための技術を習得できたこと」は、人類と金の付き合いが長いことと、深い関わりがあると、言えるでしょう。

その他にも、「魅惑の輝きを放つこと」、「汎用性があること」、「溶解して繰り返し使えること」、「さびにくく形を保存できること」、「人類が金(ゴールド)に価値があるとみなしたこと」などが、有史以来、常に人類の身近に金(ゴールド)があった理由であると、考えられます。

以下は筆者が考える、金(ゴールド)の(魔力とも言える)魅力です。ここでは、できるだけ素の金の魅力を抽出するため、株式や通貨などの「市場」との関わりを省いています。

モノの本には、金(ゴールド)は人を虜(とりこ)にする魅力を持っている、という趣旨の記載があります。

人類が金の虜になってしまう要因に、「量が少ないこと」「機能的であること」「輝いていること」「価値がゼロにならないこと」「価値を保存できること」そして、「世界共通であること」が挙げられます。

端的に言えば、量が少なく、幅広い用途に使うことができ、それでいて魅惑の輝きを放ち、価値がゼロにならないばかりか数千年も価値を保存でき、しかも世界共通、なのです。地球上で、このような量が少なくかつ高機能の物質は、稀有な存在と言えるでしょう。

金(ゴールド)の地上在庫と世界の人口のデータによれば、このおよそ10年間、金の地上在庫は増加しているものの、世界の人口が増加しているため、人類一人あたりの金の増加率は限定的であることがわかります。

そして長期的には、主要生産国からの金(ゴールド)の生産量は、頭打ちになりつつあります。このため、人類一人あたりの金の数量は今後、減少する可能性があります。

人類は歴史的に、金(ゴールド)の「希少性(=類まれな高機能+量が少ないこと)」に魅了されてきました。そしてこのような状況は、今後も、人類が金に希少性を感じ続ける限り、継続すると、考えられます。

図:金(ゴールド)の魅力(魔力?)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。