[Vol.1055] 4つの貴金属を同時に保有する手法

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.48ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,759.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,755元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年10月限は428.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで742.95ドル(前日比7.6ドル拡大)、円建てで2,619円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月13日 大引け)
6,236円/g 白金 3,617円/g
ゴム 222.6円/kg とうもろこし 35,120円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「4つの貴金属を同時に保有する手法」

前回までの3回で、コモディティ(商品)銘柄で分散することについて述べました。前回は「複数のコモディティ銘柄をパッケージ化した金融商品」とし、複数のコモディティ銘柄を一定の構成比率に基づいて作られた指数に連動することを目指す、金融商品について述べました。

今回より、貴金属銘柄で分散する手法について述べます。今回は「4つの貴金属を同時に保有する手法」として、金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウムの4つの貴金属銘柄を対象とし、各貴金属に投資をする金額の配分を考慮しながら、それらを同時に保有する手法について、述べます。

以下は、シリーズ化されている4つの貴金属のETF(上場投資信託 証券コード1540~1543)を利用した、売買シミュレーションです。投資金額をNISA枠のおよそ半分(60万円)程度とし、この金額を、金(ゴールド)に48%、プラチナに22%、銀に19%、パラジウムに11%配分しました。

各ETFの価格は、2021年8月4日(水)と1年前の2020年8月4日(火)を参照しています。1年前と言えば、金(ゴールド)の国際価格が史上最高値をつけたタイミングでした。

金(ゴールド)価格は足元、史上最高値水準だった1年前よりも安い水準にあります(6,510円→6,040円)。このため、投資資金の48%を用いて購入した45口分の金の損益はマイナス21,150円です。つまり、金のみを保有していた場合、損を抱えていたことになります。

このシミュレーションでは、金(ゴールド)以外に3つの貴金属を同時に保有しています。同期間で、金の損益はマイナスでしたが、プラチナはプラス20,295円、銀はプラス7,050円、パラジウムはプラス17,900円となり、4貴金属合計ではプラス24,095円(プラス3.92%
)となりました。

1年前、「史上最高値を超えてもっと上がる」と、さらなる上昇を見越して金(ゴールド)を買っていた場合、思惑に反し価格が下落し、損が発生したわけですが、その損を他の貴金属の利益で相殺し、その上で利益を積み上げたわけです。

図:4つの貴金属に同時に投資をした例


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。