[Vol.1059] 金(ゴールド)を手元に置く理由[3]

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。63.05ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,790.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は14,490元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年10月限は405.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで818ドル(前日比30ドル拡大)、円建てで2,867円(前日比61円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月19日 18時46分頃 先限)
6,293円/g 白金 3,426円/g
ゴム 221.4円/kg とうもろこし 34,460円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)を手元に置く理由[3]」

前回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[2]」として、素晴らしいセカンドライフにおける、「精神的安定」の優先度について、考えました。

今回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[3]」として、「家族のための運用」を考える上で重要な日本の置かれている位置を確認します。

前回の通り、運用の最も根本的な意義は「自分」の将来を充実させることでしょう。その意味では、運用上の自分と家族の両立は、程度の問題だと言えます。

例えば全運用資金の8割を自分のため、2割を家族のため、といったように、運用する本人が物理的な充足と精神的な安定のバランスをどうとりたいかによって、配分する割合はいかようにも変わるわけです。

ここからは、子供のための運用が必要である理由について述べていきます。「自分のことは自分で面倒をみるべきだ」「なぜ親が子供のために運用をする必要があるのか?」「日本はこの先も不安が生じない堅牢な先進国なのではないか?」などの考えもあると思います。

人の親として、筆者もそう思う節もあります。とはいえ、現実的にはそうも言えない状況になりつつあることが、日本が置かれている状況から感じ取れます。まずは、国家の経済力の目安とされるGDP(国内総生産:gross domestic product)を確認します。

主要国の間で2極化が進んでいることが分かります。米国と中国は勢いを伴って上昇しています。また、IMF(国際通貨基金:International Monetary Fund)は、米国と中国の差が、今後さらに縮まることを予想しています。

一方で日本は、1990年代前半に米国に肉薄こそしたものの、その後は横ばいで推移しています。現在はドイツとほぼ同じ規模です。米国に追いつけなかった、中国に大きく後れを取った、などが日本のこの30年間の振り返りと言えます。

また、豊かさの目安とされる一人あたりのGDPは、GDPと同様、日本は1990年代前半に突出した上昇を演じました。しかしその後、横ばいとなり、米国、そしてリーマンショック後の景気回復で先行したドイツ、カナダに追い抜かれました。(英国やフランスにも追い抜かれ、韓国が接近中)

こうした状況について、ある社会心理学者は、世界における日本の現在の地位について以下のように述べています。(以下、筆者要約)

日本は人口が比較的多いため※、GDPの規模は大きいものの、成長を続けるアメリカ、急成長期にある中国に比べると、成長の速度は鈍いと言わざるを得ない。一人あたりGDPで見ると、日本は「特別」豊かな国ではなくなってきている。

経済のほか、科学・技術においても、日本の相対的地位は低下し続けている。もはや日本はアジアにおけるモデルケースではなく、アジア地域において最も重視すべき相手ではなくなってきている。※217位中11位。世界銀行のデータより。

手厳しい見解です。心情的に認め難い内容を含んでいますが、この中の一部はデータが物語る以上、部分的には認めざるを得ません。これらのデータと見解を踏まえた上で、次より、日本の人口動態に関するデータに注目します。

図:主要国のGDP(名目) 単位:10億ドル


出所:IMF(International Monetary Fund)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。