[Vol.1063] あえて、リスクの数をかぞえる

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反発などで。67.11ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,796.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,475元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年10月限は429.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで799.8ドル(前日比1.4ドル拡大)、円建てで2,800円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月25日 17時47分頃 先限)
6,330円/g 白金 3,530円/g
ゴム 217.1円/kg とうもろこし 34,200円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「あえて、リスクの数をかぞえる」

前回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[6]」として、数十年後に高齢者になる世代に資産を託す際の、託し方の一例を述べました。

今回は「あえて、リスクの数をかぞえる」として、なぜ今、リスクの存在を確認する必要があるのかを、考えます。

「リスクの数をかぞえる」・・・このことは、今世界で起きていることを直視することに他なりません。「見たくないものをあえて見る」と、言い換えることもできるでしょう。

暗いニュースは見たくない、明るいニュースが見たい、ハラハラせずワクワクしたい…投資家でなくても多くの人は、そう考えていると思います。

しかし、リスクの数をかぞえなければ、それを一つの材料として動く各種市場を分析することはできません。株式、為替、コモディティ(商品)、暗号資産など、どの市場でもそうです。

明るくワクワクするニュースだけ(見たいニュースだけ)を探し求めていては、相場の動向を見誤ってしまいます。

日頃より、相場分析の際に真っ先にするべきことは、市場環境を俯瞰(ふかん)すること(全体をまんべんなく見ること)ですが、今のように、リスクが世界中で同時多発している時は特に、リスクの数をあえて、かぞえることが重要です。

同時に、リスクの動向が大きな変動要因になり得る金(ゴールド)相場の今後を考えるにあたり、足元、興味深いタイミングに差し掛かっていると筆者は感じています。

米国で段階的に金融政策を引締めることを指す「テーパリング」の議論が目立ちはじめたことを背景に、複数の専門家は「金相場は下落する」と述べましたが、今月初旬の安値から、大きく反発しているのです。

今後数回に分けて、リスクの数をかぞえながら(市場環境を俯瞰しながら)、複数の専門家が下がると述べた金相場が今後、上昇する可能性があることについて、筆者の見解を述べます。

悲観の中に一縷(いちる)の望みがある、いわば、世界がリスクであふれていても、上昇が期待できる投資商品があるかもしれない、そのような心づもりでお読みいただければ、幸いです。

図:各種銘柄の騰落率(8月9日と20日)


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。