減産免除国で起きていることは“減産”ではなく“自国都合の生産減少”

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。米原油在庫が予想を超える減少となったことなどで。53.62ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1494.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)上昇。20年1月限は11530元/トン近辺で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)下落。9月限は420.9元/バレル近辺で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで640.1ドル(前日比11.7ドル拡大)、円建てで2134円(前日比86円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(8月7日14時50分頃 先限)
 5051円/g 白金 2917円/g 原油 36210円/kl
ゴム 166.7円/kg とうもろこし 23790円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「減産免除国で起きていることは“減産”ではなく“自国都合の生産減少”」

引き続き、海外メディアが先週公表したOPECの7月の原油生産量について書きます。

イラン、ベネズエラ、リビアは、減産の責を負わない減産免除国です。

減産免除国3カ国の2019年7月の原油生産量は、1月に比べて日量81万バレル減少しました。

これは、同期間のOPEC全体の減少量である日量156万バレルの51.9%にあたり、減産参加国による減少分の48.1%を上回っています。

81万バレルの減少は、以下のグラフのとおり2017年半ばから始まっていた減少傾向の延長線上にあり、2019年1月からの現在のルールの減産開始とは大きな関わりはないとみられます。

また、リビアを除くイランとベネズエラの2カ国の生産量の合計は、少なくとも2016年半ば頃から減少し続けています。

つまり、この2カ国の原油生産量は、現在のルールの減産にも、2017年1月から始まった協調減産にも、いずれにも大きな関わりがなく、自国都合で減少し続けていると言えます。

減産免除国の原油生産量はいくら減少しても、減産順守率を上昇させることはありません。

減産免除国の原油生産量の減少は、OPEC全体の原油生産量を減少させる要因にはなったとしても、減産順守と関わりがないことを認識することが必要です。

前回の「サウジを除いた減産参加国10カ国は、減産に消極的」で書いた通り、現在、減産参加国の中でサウジ1国のみが減産に積極的で、他の減産参加国が減産に消極的な状況です。

このような状況では、減産免除国の生産減少(意図した生産減少ではないので“減産”とは言わない)が、減産順守に貢献しているように見えてしまう“誤解”が生じます。

正しく減産を評価するためには、OPEC全体における原油生産量を、減産参加国によるもの、減産免除国によるもの、とに明確に分けて認識することが必要不可欠だと筆者は考えています。

図:減産免除国(3カ国)の原油生産量 単位:百万バレル/日量
減産免除国(3カ国)の原油生産量

出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。