[Vol.1083] 現在の原油生産量No1は米国

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。73.47ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,755.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は13,365元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年11月限は488.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで774.6ドル(前日比21.8ドル拡大)、円建てで2,774円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月24日 18時49分頃 6番限)
6,224円/g 白金 3,450円/g
ゴム 200.9円/kg とうもろこし 33,990円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「現在の原油生産量No1は米国」

前回は、「不可逆的テーマは「複雑化」に強い」として、米同時多発テロ後の20年間で世の中が「複雑化」する中、超長期的に価格上昇が期待できそうな銘柄について述べました。

今回は、「現在の原油生産量No1は米国」として、現在の原油生産量No1が米国であることと、その背景について書きます。

以下の英文の通り、米国の政府機関である米エネルギー情報局(EIA)のウェブサイトに、米国は世界で最も大きな原油生産国だと、書かれています。

The United States became the world’s top crude oil producer in 2018 and maintained the lead position in 2019 and 2020. (EIAのウェブサイトより抜粋)

以下の図からも、2018年に米国がサウジを追い抜き、トップに躍り出たことが確認できます。

米国が世界No1の原油生産国になった原因は、2つあります。1つ目は、広く報じられているとおり、米国で「シェール革命」が起きたためです。

歴史的に石油産業が根付いている米国は、高い掘削技術を持っています。土地の所有者に地質調査や鉱物資源を所有する権利がある米国独特のルールも、革命を後押ししました。2010年ごろからの生産量の急増劇は、まさに革命です。

2つ目は、OPEC(オペック)加盟国とOPECの考えに賛同する非加盟国が、原油の減産を開始したためです。OPECとは、Organization of the Petroleum Exporting Countriesの頭文字をとった組織の名前で、日本語は、石油輸出国機構です。

「輸出」ですので、「輸入」する国は原則、加盟していません。かつてインドネシアは加盟国でしたが、2016年末に脱退しました。輸入量が増加したことが一因と言われています。米国が加盟していない主な理由は、主体が国ではなく、企業だから、だと考えられます。

この場合の減産とは、原油生産量を人為的に削減することです。2021年7月時点で、OPECとその考えに賛同する国は合計で23カ国あり(OPECプラスと呼ばれています)、世界全体に占める生産シェアはおよそ半分です。

こうした大きなシェアを占めるグループが、生産量を減らした場合、世界全体で供給量が減り、原油市場に上昇圧力がかかります。

原油を輸出する国にとって、原油価格は「単価」であり、収益を支える重要な要素です。この「単価」を引き上げるべく、彼らは自ら「量」を減らしているわけです。量を減らしても、単価が一定水準を超えていれば、収益を維持することができるのでしょう。

2017年1月から始まったOPECプラスの減産は、休止した2020年4月を除けば、4年8カ月、続いています。こうした、サウジアラビアとロシアの自ら生産量を絞る行為もまた、シェール革命と同様、米国を原油生産量No1にした要因と言えます。

図:世界トップ3の原油生産量 単位:千バレル/日量


出所:JODIのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。