[Vol.1101] 原材料価格+為替+運賃などを考慮

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。81.75ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,775.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は15,320元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年12月限は525.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで730.25ドル(前日比3.8ドル拡大)、円建てで2,708円(前日比43円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月20日 16時15分頃 6番限)
6,528円/g 白金 3,820円/g
ゴム 233.5円/kg とうもろこし 38,950円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原材料価格+為替+運賃などを考慮」

前回は、「身近な品目、相次ぐ秋の値上げ」として、今月になって宣言された、さまざまな品目の値上げについて述べました。

今回は、「原材料価格+為替+運賃などを考慮」として、私たちの手元に商品が届くまでの流れについて、述べます。(原材料が海外で生産されている場合)

各種コモディティ(商品)の国際価格が上昇していることを受け、日本における各種品目の輸入価格も上昇しています。この点は、私たちに身近な品目の価格上昇をより強く、裏付けています。

日本が「原材料輸入大国」である理由には、自国で生産をすることが難しい(地理や気象条件などのため)、輸入したほうが効率が良い(人件費などのため)、輸入先との関係維持のため(相手の経済発展に資する)、などが挙げられます。

原材料の生産から日本に住んでいる私たちが消費するまでを、川の流れに例えると、以下のようになります。「原材料輸入大国」は、各種コモディティの国際価格(最上流)のほか、運賃相場や為替(川中)、国内における加工・物流コスト(川中から川下)の影響も受けます。

前回のとおり、私たちに身近な品目の値上げについて、大手企業は主な理由を、生産地での天候不順による供給障害としていました。つまり、「最上流」で、価格を上昇させる要因が発生したと、しているわけです。

しかし、原材料の生産地と消費者が遠ければ遠い(加工や流通の過程が多い)ほど、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しないこともあります。

仮に最上流で価格上昇が見られても、加工や流通、あるいは小売業者が、安く買いたいと考える消費者の意向に沿うため、価格上昇分を吸収する(業務効率化で別のコストを減らすなど)ことがあるためです。

とはいえ、さまざまな品目で値上げが相次いでいることを考えれば、もはや業者たちが価格上昇分を吸収することが、限界に達していると、考えられます。それだけ、最上流での価格上昇がきついのだと思います。

また、最上流の価格上昇に乗じて最上流価格の上昇以上に末端価格を上昇させることを「便乗値上げ」、末端価格を上昇させなくても内容量を減らす「ステルス値上げ」などが、起きることがあります。こうなると、最上流価格が下落しても、末端価格が下落せずに、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しない場合があります。

図:私たちの手元に商品が届くまで(原材料が海外で生産されている場合)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。