[Vol.1102] 原油高、身近な品目高は続く!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。82.78ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,788.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は15,235元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年12月限は529.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで734.85ドル(前日比2.25ドル拡大)、円建てで2,710円(前日比19円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月21日 18時48分頃 6番限)
6,543円/g 白金 3,833円/g
ゴム 235.8円/kg とうもろこし 39,590円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油高、身近な品目高は続く!?」

前回は、「原材料価格+為替+運賃などを考慮」として、私たちの手元に商品が届くまでの流れについて、述べました。(原材料が海外で生産されている場合)

今回は、「原油高、身近な品目高は続く!?」として、筆者が考える、足元の原油相場の上昇要因をまとめます。

WTI原油先物価格はこの1年間で2倍以上になりました。2020年10月というと、バイデン氏とトランプ氏が戦った米大統領選挙の1カ月前です。バイデン氏勝利→脱炭素進む→原油消費量減少→原油価格下落、という連想を抱いた人もいましたが、実際は真逆のことが起きています。

筆者は、足元の原油相場の上昇は、以下の通り、4つの要因で起きていると考えています。原油相場の足元の上昇要因で挙げた4つのうち、2と4には共通点があります。「脱炭素」です。

世界的な大合唱となっている「脱炭素」によって、米国で、将来的に使わなくなることを見越して石油開発が鈍化したり(2に関連)、石炭消費国で、比較的二酸化炭素の排出量が少ないとされる天然ガスや石油へのシフトが進んだり(4に関連)、しているためです。

長期視点では、産油国が、「脱炭素」が進み、自国で産出する石油を消費してくれる国が少なくなることを想定し、いまのうちに原油価格を引き上げて収入の一要素である「単価(=原油価格)」をつり上げることを企図している可能性を考えれば、1も、「脱炭素」絡みの原油相場の上昇要因と言えるでしょう。

前回、図に示したとおり、エネルギー(電力を含む)は、川上から川下まで、どの段階でも使われています。例えば、掘削機や農業用機械を動かすためにはエネルギーが必要です。生産した物を運ぶのにも、加工するための機械を動かすのにも、加工したものを小売業者に運ぶのにも、エネルギーが必要です。特に、生産や流通段階で用いられる大型の機械では、「脱炭素」の大合唱が響いている今でもなお、石油が多用されています。

「経済の血液」といわれる「原油」の大幅な価格上昇(脱炭素が一因と見る)は、多くのモノの価格を「底上げ」していると言えるでしょう。もはや「脱炭素」=「インフレ」は、決して言い過ぎではありません。人類の「脱炭素」への願望・熱意が、インフレの一因である可能性があります。

「脱炭素」は、世界的な、不可逆的(後戻りしない)ブームです。この「脱炭素」は、これまでの数カ月間、そうであったように、今後しばらく、原油相場をさらに上昇させる要因になると、みています。

原油相場の上昇が、足元のさまざまな品目の値上げに関わり、そして今後もしばらく、高止まりか値上げが続く、可能性があります。家計の最適化のためにも目先、しばらく、コモディティ市場に注目することが、有用だと考えます。

図:足元の原油相場の反発要因


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。