[Vol.1120] 金(ゴールド)上昇。「材料の足し引き」とは?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.97ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,862.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は14,615元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年01月限は510.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで788.55ドル(前日比8.95ドル拡大)、円建てで2,906円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月17日 18時44分頃 6番限)
6,856円/g 白金 3,950円/g
ゴム 228.8円/kg とうもろこし 37,720円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)上昇。「材料の足し引き」とは?」

前回は、「今月前半は、株・ドル・金高、エネルギー安」として、今月前半の、各種銘柄の騰落率を確認しました。

今回は、「金(ゴールド)上昇。「材料の足し引き」とは?」として、足元の、金(ゴールド)市場の環境を確認します。

[Vol.1119] で述べたとおり、今月前半、世界の金(ゴールド)価格の指標の一つ、NY金先物価格は上昇しました。

足元の金(ゴールド)市場の材料を確認すると、以下のようになると、筆者は考えています。[Vol.1119] の騰落率のグラフのとおり、足元、「株高・ドル高」であるため、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の側面から、金(ゴールド)市場に下落圧力がかかっていると、考えられます。

しかし、実際のところ、金(ゴールド)価格は上昇しています。この値動きを説明するには、簡単な「材料の足し引き」が必要です。足元の金(ゴールド)市場は、「株高・ドル高」起因の下落圧力を相殺して余りある上昇圧力を受けている、ということです。

その上昇圧力は、「各種リスク拡大」と「インフレ懸念」がきっかけで発生していると考えられます。これら2つの材料は、6つのテーマの「有事のムード」と「代替通貨」に分類できます。

「インフレ(物価高)懸念」は、換言すれば「(相対的な)通貨安懸念」であり、その通貨安懸念が、「代替通貨」の側面から、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけます。

また、「有事のムード」を強めている各種リスクについては、先々週のFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリングが決定したことにより、「利上げ」が現実味を帯び始めたことが関わっていると、筆者はみています。

次回以降、「利上げ」がリスクを拡大させる一因になっているとみられる点について、書きます。

図:足元の、金(ゴールド)市場における6つのテーマ


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。