[Vol.1122] 「脱炭素」起因の原油相場上昇要因

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.14ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,859.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,995元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年01月限は506.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで801.25ドル(前日比3.75ドル縮小)、円建てで2,939円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月19日 17時12分頃 6番限)
6,817円/g 白金 3,878円/g
ゴム 230.2円/kg とうもろこし 38,600円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「脱炭素」起因の原油相場上昇要因」

前回は、「リスク『ドルキャリー取引の巻き戻し』とは?」として、足元の、金(ゴールド)相場を押し上げている要因とみられる、リスクの一つについて書きました。

今回は、「「脱炭素」起因の原油相場上昇要因」として、「脱炭素」と原油市場の関係について、筆者の考えを述べます。

以下は、温室効果ガス排出権価格の推移です。長期的に見れば、2020年11月にバイデン氏が米大統領選挙で勝利宣言をしたタイミングから、価格上昇に勢いが出たことが分かります。

価格上昇は、「脱炭素」ブームが、今まさに拡大中であることを示唆しています。排出権取引は、温室効果ガスを過剰に排出せざるを得ない企業や国が、排出量が少ない企業や国から、排出する権利を融通する(購入する)手法として、存在します。

また、価格上昇は、権利(温室効果ガスを排出できる権利)を欲する企業や国が増えてきていることをも意味します。権利を購入することは、「脱炭素」時代を生きるための、一つの術(すべ)と言えるでしょう。

夏場を過ぎて一時、反落したものの、先日まで行われたCOP26で、同ガスの排出削減目標が再確認されたことなどを背景に上昇に転じ、足元、史上最高値をうかがう展開となっています。

「脱炭素」が人類共通の超長期的な目標である以上、温室効果ガスの排出権価格の上昇や、「脱炭素」がもたらすさまざまな世の中への影響は、今後も長期的に続くと、考えられます。

「脱炭素」がもたらす世の中への影響の中には、「1.産油国の態度硬化」「2.米国の原油生産量の回復鈍化」「3.石炭代替のための石油需要増加」といった、原油相場に上昇圧力をかけるものもあります。

数十年先を想定すればその限りではありませんが、目先、数カ月程度の時間軸で考えれば、「脱炭素」は、上記3つの経路から、今後も原油相場に上昇圧力をかける可能性があると、筆者は考えています。

図:温室効果ガス排出権先物価格 単位:ユーロ/トン


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。