[Vol.1123] 「ドル高・金高」が目立っている

著者:吉田 哲
ブックマーク

原油反発。米主要株価指数の反発などで。76.33ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,846.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は15,470元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年01月限は487.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで807.05ドル(前日比8.55ドル縮小)、円建てで2,956円(前日比19円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月22日 17時59分頃 6番限)

6,766円/g 白金 3,810円/g ゴム 238.1円/kg とうもろこし 38,250円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス



出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「ドル高・金高」が目立っている」

前回は、「『脱炭素』起因の原油相場上昇要因」として、「脱炭素」と原油市場の関係について、筆者の考えを述べました。

今回は、「「ドル高・金高」が目立っている」として、先月末から先週末にかけて発生した「ドル高・金(ゴールド)高」ついて、筆者の考えを述べます。

先月末から先週末までの、各種主要銘柄の騰落率を確認すると、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)を経て、「温室効果ガス排出権」先物価格が騰勢を強めたことがわかります(史上最高値を更新中)。そして、主要銘柄の中でも、「金(ゴールド)」価格の上昇が目立っています。

FRB(連邦準備制度)は、11月1週目に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で、金融緩和の縮小(テーパリング)を決定しました。今月中旬より、資産の買い入れ額の減少が始まったと、報じられています。こうした動きを受け、「ドル指数」(複数の主要国通貨に対するドルの強弱を指数化したもの)が上昇しています。

つまりこの間、「ドル高・金(ゴールド)高」だったわけです。ドルが上昇する時、「世界のお金」という共通点を持つドルと金において、ドルが強く、相対的に金が弱くなる思惑が強まるため、“教科書的には”ドル高は金安要因と言えます。

しかし、足元、金(ゴールド)価格は教科書的な動きになっていません。このカラクリを解明するために必要なことが、「材料の足し引き」です。以下は、筆者が考える、金市場を動かす6つのテーマです。短中期的には1~3の影響を強く受けると、考えます。

現在の金(ゴールド)市場には、「テーパリング開始」「利上げ観測」といった、米国の金融政策起因の「ドル高」要因から下落圧力がかかっていると考えられます。しかし、その理屈に反して価格が上昇していることを考えれば、別の文脈から、そうした下落圧力を相殺して余りある、上昇圧力がかかっていると、考えられます。

諸条件より、「各種リスク拡大」や「インフレ懸念」が、上昇圧力をもたらしていると、考えられます。次回以降、足元で強まっている「各種リスク」について書きます。

図:足元の、金市場における6つのテーマ



出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。