戦略備蓄放出も、原油市場の調整は限定的、変異株が波乱要因

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 バイデン米大統領は23日に、日本や中国、インド、韓国、英国と協調して石油の備蓄を放出すると発表した。

 米国政府は、「OPECプラス」に対しては増産要請、同盟国には石油備蓄放出を呼び掛けてきた。原油高(国内インフレ)を抑えたい中国とも利害が一致すると言うことで、米中首脳会談でも、協調行動を要請した。

 これらの動きを受けて、NY原油(1月限)は、ネックライン(11月4日安値)を割り込んでダブルトップ完成、下げ加速したものの、8月安値~10月高値までの上昇に対する38.2%押し(75.0ドル)で下支えられて反発となっている。

 米政府は今後、数ヶ月かけて5000万バレルの戦略備蓄を放出すると発表したが、市場予想より小さい規模との受け止めが広がっている。

 今週は、米エネルギー情報局(EIA)週間在庫統計で、原油在庫が減少予想に反して、増加したことや、感謝祭(サンクスギビングデー)の祝日で休場となるため持ち高調整の売りも出やすかったが、石油消費国による備蓄放出や、欧州における新型コロナウイルスの流行や、ロックダウンや行動制限に対する「OPECプラス」の対応が注目され、安値を売り込む動きは避けられた。

 投機的な過熱感が高まり、バブルの風船がパンパンに膨れ上がっている状況であれば、戦略備蓄放出のニュースで大幅下落の可能性はあっただろうが、原油市場の内部要因をみると、CFTC建玉明細の大口投機玉の買い越しは、過熱感のある水準ではない。"

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/