戦略備蓄放出も、原油市場の調整は限定的、変異株が波乱要因

著者:菊川 弘之
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 北半球最大の暖房油需要期は、これから始まり、11月29日にはイランと欧州・米国と核合意の再建協議が再開予定だが、反米強硬派のライシ政権は、米国の経済制裁の一斉解除や、米国が二度と合意から離脱しない保証を求めており、交渉は難航が予定されている。

国際原子力機関(IAEA)報告書によると、イランは濃縮度60%のウランを推定17.7キログラム製造。核兵器級である90%が目前に迫っている。核合意で定めた濃縮度の上限は3.67%で、重大な違反を続けている。

 サウジアラビア主導の連合軍は24日、イエメンの首都サヌアの「正当な」軍事目標に対して空爆を開始すると発表。イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、2015年3月にサウジ主導の連合軍がイエメンに介入して以来、無人機やミサイルを使ってサウジに越境攻撃を繰り返している。イスラエルやサウジが、イランの核開発をいつまでも黙認する可能性も低いだろう。

 12月2日に「OPECプラス」の閣僚会合が行われるが、主要国の戦略備蓄放出を受けて、サウジアビアとロシアは、増産停止を検討していると報じられている。

 かつて油価が上昇すると、「DUC」(Drilled but Uncompleted Wells=掘削済み未仕上坑井)から原油が出てくる(値が品を呼ぶ)と言われたが、足元で「DUC」はここ数年で最低水準。ラニーニャ現象に伴う北半球の厳冬予想も出ている中、原油価格の高止まりは、もうしばらく続きそうだ。


このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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