戦略備蓄放出も、原油市場の調整は限定的、変異株が波乱要因

著者:菊川 弘之
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 また、サウジアラビア主導の連合軍は24日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の軍事目標に対して空爆を開始すると発表。イスラエルやサウジが、イランの核開発をいつまでも黙認するかは不透明だ。更に、中東からベラルーシ経由で欧州へ流入する難民・移民が深刻な問題を引き起こしている。11月に入り、ベラルーシ・ポーランド国境地帯でポーランド治安部隊と難民・移民の激しい衝突があったが、ベラルーシはロシアと同盟関係にあり、ポーランドはNATO(北大西洋条約機構)の一員で、このまま状況が改善しないと、ベラルーシ軍とポーランド軍が衝突する危険性さえある。

 ベラルーシにはロシアが欧州向けに天然ガスを供給する主要パイプラインの一つが走る。2008年には、もう一つのパイプライン通過国であるウクライナ経由のガス輸送が止まり、多くの欧州国が深刻なエネルギー危機に陥った。ドイツが、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認手続きを一時停止したこともあり、再び天然ガスの供給懸念も浮上している。

 中国の規制強化や石炭供給増加方針への転換で石炭価格は下落したが、天然ガス価格は、再度切り返しとなっている。

原 油市場の弱気要因として急浮上しているのが、南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスが確認されたことだ。ウイルス表面の突起状のたんぱく質「スパイク」に多数の変異が生じており、高い感染力やワクチンが効きにくい免疫逃避の恐れが指摘されている。南アでは感染者が急増しており、保健相は、変異株が感染者数の「指数関数的」な増加の要因になっているとして「深刻な懸念」を表明している。

 この変異株は、香港とボツワナでも、南アフリカからの旅行者から検出されており、英国は25日、南アと、ナミビア、レソト、エスワティニ、ジンバブエ、ボツワナの各国からの飛行機の乗り入れを禁止すると発表。今週、パウエルFRB議長の再任で、利上げ観測が高まったものの、変異株の感染次第では、金融市場にも大きな影響が出そうだ。"

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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