2022年展望(金・原油)

著者:菊川 弘之
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 石油輸出国機構(OPEC)プラスが、市場予想通り、2月も日量40万バレルの増産を継続することで合意した。OPECプラスは新型コロナウイルスのオミクロン株が需要に与える影響は一時的かつ軽微であると認識しており、見通しは楽観的。「OPECプラス」は2020年3月、新型コロナのパンデミックに伴う需要減少で、過去最高水準の減産方針で合意し、日量1000万バレル(世界産油量の約10%相当)の減産に踏み切ったが、コロナ感染が落ち着きを見せ始めた2021年8月以降、毎月日量40万バレルずつ生産量を増やし、減産幅を段階的に縮小(事実上の増産)している。ただし、「OPECプラス」内でも物理的に増産が困難な小規模生産国も出ている。

 足もとではOPEC加盟国のカザフスタン(日量160万バレル生産)で、液化石油ガス(LPG)販売価格が2倍に急騰したことに対する抗議活動で騒擾状態に陥り、全国土に非常事態宣言が出されている。

 世界的な脱炭素の流れから欧米主要開発企業が原油開発への投資を縮小。米国では過去のシェールブームでの投資負担が重く、コロナ禍で赤字が拡大したシェール企業が、財務内容改善のために投資を抑制する動きが強まり、原油価格がいわゆる採算コスト(シェールオイルの生産コストは平均で1バレル=30ドル台半ばで、新規油田開発採算ラインが50ドル前後)を超えて上昇しても、生産増加のペースは鈍く、アフターコロナでの需要増加が期待される中、小規模生産国の生産量が落ち込んだだけでも、需給タイト感が材料視されやすい。

 かつて油価が上昇すると、「DUC」(Drilled but Uncompleted Wells=掘削済み未仕上坑井)から原油が出てくる(値が品を呼ぶ)と言われたが、足元で「DUC」は、ここ数年で最低水準だ。


 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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