[Vol.1155] 天然ガス版OPEC、「GECFプラス」とは?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。82.25ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,826.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,925元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年03月限は524.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで852.15ドル(前日比4.95ドル拡大)、円建てで3,137円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月13日 16時48分頃 6番限)
6,710円/g 白金 3,573円/g
ゴム 242.3円/kg とうもろこし(まだ出来ず)

●NY天然ガス先物(期近) 日足  単位:ドル/百万英国熱量単位


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「天然ガス版OPEC、「GECFプラス」とは?」

前回は、「天然ガスと原子力は「お墨付き」を得た!?」として、欧州委員会が天然ガスと原子力を、「脱炭素」推進に資するエネルギーであるとの見方を示したことについて書きました。

今回は、「天然ガス版OPEC、「GECFプラス」とは?」として、欧州委員会が天然ガスと原子力を「脱炭素」推進に資するエネルギーであるとの見方を示したことにより、メリットを享受する可能性があるグループについて書きます。

欧州委員会が天然ガスに「お墨付き」を与えることを示唆したことで、天然ガスへの関心が、今まで以上に高まることが予想されます。こうした動きを好意的にとらえていると考えられるのが、天然ガスを輸出している国々です。

「GECF (The Gas Exporting Countries Forum:ガス輸出国フォーラム)」という産ガス国のグループがあります。さしずめ、「天然ガス版のOPECプラス」となるでしょうか。

GECFは、最初の会合を2001年に行いました。2007年ごろから活動を本格化させ、現在、11カ国のメンバーと、7カ国のオブザーバー(≒議決権のない参加者)とで構成されています。18カ国中、12カ国がOPECプラスのメンバーです。

産油国の一つである北欧のノルウェーが含まれているのは、随伴ガス(原油を生産した際に油田から発生する天然ガスの一種)の生産が行われているためだと、考えられます。また、事務局長はロシア政府でエネルギー関連の要職を務めた人物(ユーリー・センチュリン氏)です。

昨年より、GECFとOPECの連携強化が目立ち始めています。OPECの資料によれば、GECFは、2021年10月27日に、前年(2020年)11月に続き2回目となるOPECとの合同会合を主催しました。

2020年11月は、バイデン氏がトランプ氏との激戦の果てに勝利宣言をした、米大統領選挙が行われた月でした。GECFとOPECは、バイデン氏が前面に押し出した「脱炭素」推進への強い姿勢が、彼らの生命線ともいえる化石燃料の存在を脅かしていると、受け止めた可能性もあります。

しかし現在、あの環境配慮先進地域の欧州が、彼らの生命線の一つである天然ガスに「お墨付き」を与えることを示唆しました。この示唆により、(石炭と石油は、今後さらに市民権を失うことになるかもしれませんが)これまで見られた化石燃料を漠然と広く否定する動きに変化が見られたことは、確かでしょう。

今後長期的に、GECFがこうした動きに乗じて、OPECプラスがそうであるように、消費国に根強い需要があることを逆手にとって、「減産による価格引き上げ」や「増産による価格引き下げ」を行ったり、大きなシェアを後ろ盾にして、アナウンス効果を使って世界のエネルギーの安全保障や政治問題などに対して、影響力を持つようになったりする可能性を否定することはできません。

欧州の天然ガスへのお墨付きを与える示唆は、GECFの影響力を大きくする大きなきっかけになるかもしれません。

図:GECF(ガス輸出国フォーラム)


出所:GECFの資料より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。