ハリケーン襲来が心理的な原油価格の上昇要因になる理由

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の強含みなどで。53.92ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの弱含みなどで。1,538.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は11,505元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年10月限は421.7元/トン付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで678.25ドル(前日比0.35ドル縮小)、円建てで2,255円(前日比28円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(8月27日 14時41分頃 先限)
 5,181円/g 白金 2,926円/g 原油 35,700円/kl
ゴム 164.3円/kg とうもろこし 22,240円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「ハリケーン襲来が心理的な原油価格の上昇要因になる理由」

前回は「およそ2年8カ月間、減産を続けている国々の状況」として、2017年1月の協調減産開始以来、継続して減産を実施しているOPEC加盟国8カ国に注目しました。

今回は「ハリケーン襲来が心理的な原油価格の上昇要因になる理由」として、米国の原油生産事情に注目します。

8月27日(火)現在、米国南東部、カリブ海付近に、熱帯暴風雨「ドリアン」があります。

ナショナルハリケーンセンター(NHC)のウェブサイトによれば、この「ドリアン」は、数日前、カリブ海よりも遠い大西洋上にありました。

ハリケーンはこれまで、短期的ではあるものの、メキシコ湾周辺地区の原油生産量を減少させたことがありました。

それにより、“ハリケーン襲来”と“原油相場の上昇”、がワンセットになっているのだと筆者は感じています。

その、ハリケーンの襲来によって原油生産量が一時的に減少したメキシコ湾周辺地域は、原油生産量の面で言えば、どのような意味を持つ地域なのでしょうか?

以下のグラフは、2019年5月時点の、米国の地域別原油生産シェアを示しています。

テキサス州、メキシコ湾(洋上)、ニューメキシコ州、ルイジアナ州の4つをメキシコ湾周辺地域としました。

この4つの地域の原油生産量の合計は、米国全体の65.2%に上ります。

一部の米シェール主要地区を含む米国全体の65%以上を生産する同地区に熱帯暴風雨が接近すれば、世界全体の原油需給が引き締まる可能性が生じるだけでなく、OPECの減産効果を薄めてきた要因の後退、という意味もあり、心理的にも原油相場の上昇要因になるのだと筆者は考えています。

ハリケーンの進路や勢力と、メキシコ湾周辺地区の原油生産量の推移に、引き続き、注目したいと思います。

図:米国全体に占める各地域の原油生産シェア(2019年5月)

出所:米エネルギー省(EIA)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。