[Vol.1191] ウクライナ関連銘柄、騰勢を強める

著者:吉田 哲
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原油反発。ウクライナ情勢の悪化などで。121.89ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ウクライナ情勢の悪化などで。2,012.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は13,640元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年04月限は785.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで867.15ドル(前日比12.15ドル縮小)、円建てで3,258円(前日比45円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月8日 17時36分頃 6番限)
7,431円/g 白金 4,173円/g
ゴム 243.0円/kg とうもろこし 48,680円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ウクライナ関連銘柄、騰勢を強める」

前回は、「金(ゴールド)相場、2000ドル到達」として、3月4日にNY金先物が2000ドルに到達したことについて、書きました。

今回は、「ウクライナ関連銘柄、騰勢を強める」として、足元、価格の上昇と下落が目立っている銘柄に注目します。

足元、欧州の天然ガス、原油などのエネルギー、小麦、トウモロコシ、菜種などの農産物、パラジウム、ニッケル、アルミニウムなどの金属といった、「ウクライナ情勢関連銘柄」の上昇が目立っています。

また、バルチック海運指数、温室効果ガス排出権の下落が目立っています。この2銘柄も「ウクライナ情勢関連銘柄」であると、筆者は考えています。上昇・下落が目立つこれらの銘柄と「ウクライナ情勢」との関わりは以下のとおりです。

「ウクライナ情勢の悪化」をきっかけに、原発活用リスク、ロシア依存リスク、脱炭素否定論、資源の武器利用、同一カテゴリー内での類似商品高など、さまざまなテーマが浮上し、関連する銘柄の価格が動いているわけです。

今回の混乱の当事国であるロシアは、「資源を武器」に用いることがしばしばあります。自国の流通量を確保するために「関税を引き上げる」(穀物など)、欧州向けのエネルギーのパイプラインの「封鎖を示唆する」などです。

ロシアにとって、こうした「資源の武器利用」は、資源国という特徴を生かした、政治上の駆け引きを有利に進めたりするための、常とう手段であるわけです。

今回も、ロシアが主要な生産国である、天然ガス、原油、小麦、アルミニウムなどを武器として利用する懸念があります。欧米諸国が行っている制裁に対抗し、こうした品目の輸出量を意図的に減らす可能性があります。

もっとも、銀行決済機構からのロシア排除が進んだり、さまざまな企業がガバナンス(企業統治)を優先して戦争を引き起こした国から意図的に物を買わなくなったりすることが想定されるため、ロシアによる「資源の武器利用」の効果は限定的なものになる可能性はあります。しかし、流通量の減少(減少懸念を含む)は価格上昇要因になり得るため、注意が必要です。

図:「ウクライナ関連銘柄」価格変動の背景


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。