[Vol.1192] こぶしを振り上げ続ける各国 状況改善見えず

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米国のロシア原油禁輸などで。124.44ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,050.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は14,190元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年04月限は806.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで864.3ドル(前日比25.8ドル縮小)、円建てで3,330円(前日比19円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月9日 17時42分頃 6番限)
7,610円/g 白金 4,280円/g
ゴム 246.0円/kg とうもろこし 51,950円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「こぶしを振り上げ続ける各国 状況改善見えず」

前回は、「ウクライナ関連銘柄、騰勢を強める」として、足元、価格の上昇と下落が目立っている銘柄に注目しました。

今回は、「こぶしを振り上げ続ける各国 状況改善見えず」として、西側諸国(欧米中心)とロシアの要人の発言を振り返ります。

「こぶしを振り上げる」とは、たとえです。以下の通り、「欧米」と「ロシア」、二者いるとして、彼らの軍事侵攻直前から足元までの、主なやり取りを書いてみました。

欧米側はロシアを非難したり制裁をしたりする姿勢を強めています。この点は、欧米側の「こぶしを振り上げること」です。一方、ロシア側は軍事侵攻の手を緩めていません。この点は、ロシア側の「こぶしを振り上げること」です。

争いが起きた時、どのような過程を経て鎮静化に達するでしょうか。1.片方が片方に屈服する、2.片方が片方を完全に凌駕(りょうが)する、3.第3の選択を見いだして意識をそらし、直接的な争いから離れる、4.お互いが歩み寄る、などが挙げられます。

では現在の「欧米」と「ロシア」の関係は、4つのうち、どれに当てはまるでしょうか。どれにもあてはまりません。争いに決着がついていない(1でも2でもない)、他の選択がもたらされていない(今のところ、国連などが入る余地がほとんどない)、お互い「こぶし」を振り上げ続けており、歩み寄る気配がないためです。

4の「歩み寄り」は問題解決のために、欠かせない過程ですが、今の「欧米」と「ロシア」は、上図のとおり、自らの意図(欧米であれば非難・制裁、ロシアであれば軍事侵攻)を拡大させており、「歩み寄り」とは全く逆の方向を向いています。

欧米は、欧米や世界全体がダメージを受けることを覚悟で、ロシア経済の柱であるエネルギー産業への制裁を急激に強化しています(こぶしを振り上げ続けている)。

ロシアもロシアで、3つ目の原発を占拠する方針を打ち出しているとの報道があるなど、軍事侵攻の手を緩める気配がありません。ウクライナとの停戦合意に向けた会合も、ウクライナが完全に軍事活動を停止しないかぎり、進展しないとしています(ロシア側もこぶしを振り上げ続けている)。

こうした状況のため、目下発生している争いは、まだ継続する可能性があります。すなわち、目先しばらく、各種「ウクライナ情勢関連銘柄」は、欧米側がロシアを銀行決済機構から排除することを決めた直後から動いている方向と同じ方向に推移する可能性がある、ということです。

図:軍事侵攻直前からの欧米とロシアの主な発言


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。