円建て金に妙味あり

著者:菊川 弘之
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 一方、黒田日銀は3月30日に9年ぶりの (指値オペを含む)買いオペ3兆2000億円を実施。黒田総裁の就任直後「戦力の逐次投入はしない。バズーカ砲だ」と言ったときと同じ額のオペを行った。

 米国は40年ぶりのインフレで、今後、かなりの金利引上げが不可欠な一方、日銀は金利を上げれば債務超過で自身の死亡宣告となるから金利を上げられない構図となってきた。

 次回米連邦公開市場委員会(FOMC)(5/3-4)にかけて、再度、125円を試す流れとなっている。FRBが注視する個人消費支出(PCE)価格指数の伸びは前年同月比6.4%と前月の6.0%から加速し、1982年1月以降で最も高くなっている。

 GANNのアニバーサリーデイト(変化が起こり易い日柄)は、4月~5月GWに集中する。ドル円は、125円水準が「黒田シーリング」として意識されているものの、日米の金融政策の違いから金利差拡大思惑を背景に125円を抜けていくと、踏み上げ的な値動きも想定される。

 2025年に日本は3人一人が65歳以上、5人に一人が75歳以上と言う世界に類を見ない「超高齢化社会」へ突入する。「年金」「財政」など、投機的な仕掛けに向くテーマになりやすい問題も多く、投機的な仕掛けから「悪い円安」が加速した場合、「円建て金」の優位性が注目されそうだ。

 中長期的には、20年以内に発生する確率が高いと言われる「南海トラフ巨大地震」「富士山の噴火」などは、強烈な円売り要因となるだろう。

 1990年代はNY金が上昇しても、円建て金は円高進行で上値が抑えられ、相対的に世界の中で想定的に最も弱い金価格となったが、悪い円安が進行した場合、NY金の上昇に加えて、円安ドル高分が加わり、相対的に世界で最も強い金価格となるかもしれない。

 悪い円安に対するヘッジとしても、円建て金が注目されそうだ。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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