[Vol.1230] 「パラドックス」とは?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。108.41ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,865.54ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,435元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年06月限は702.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで934.64ドル(前日比7.84ドル拡大)、円建てで3,979円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月9日 17時25分頃 6番限)
7,858円/g
白金 3,879円/g
ゴム 249.1円/kg
とうもろこし 57,070円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「パラドックス」とは?」

前回は、「過去を否定し「花の山」に向かう」として、筆者が考える「コモディティ投資で勝つために必要なこと」について述べました。

今回は、「「パラドックス」とは?」として、ウクライナ情勢のきっかけを探るヒントにもなり得る「パラドックス」について、考えます。

有名なパラドックスの例に、「私は嘘(うそ)つき」があります。仮に、この発言が真(私=正直者)だとすると、「私は嘘つき」は真(この人の発言内容=嘘)です。そうすると、仮定(私=正直者)と結論(私=嘘つき)は矛盾します。

逆に、この発言が偽(私=嘘つき)だとすると、「私は嘘つき」は偽であるため、「私は正直者」となります。そうすると、仮定(私=嘘つき)と結論(私=正直者)は矛盾します。パラドックスとは、一見、正しく見える仮定から、矛盾に満ちた納得しがたい結論が導かれてしまう問題のことです。「自己矛盾」と言い換えることもできます。

「西側諸国」(欧州や米国などの主要国とその同盟国。以下、西側)には、巨大なパラドックスが複数存在します。西側は「自由」「平等」「競争」「団結」が社会の幸福に寄与すると考える資本主義社会です。

西側は「自由」な「競争」を旨とし、お金の循環を市場の自己調節機能に任せましたが、その結果、巨大な「不平等」と「格差」が生まれました。また、「団結」を目指してベルリンの壁を壊したり、EUを作ったりしたが、心情的な結びつきよりも経済的な結びつきが優先されるようになり、「分断」が発生(英国離脱)しました。

一見、正しく見える考え方から、納得しがたい結論が導かれてしまっています。これはパラドックス以外の何物でもありません(その他の例を下図に記載)。この「パラドックス」が、ウクライナ危機のきっかけを探るヒントになると、筆者は考えています。詳細を次回以降述べます。

図:西側が抱えるパラドックスの例


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。