[Vol.1271] 悪手1:経済指標発表時に純金積立を開始する

著者:吉田 哲
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金反落。ドル指数の反発などで。1,806.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年08月限は722.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで942.3ドル(前日比16.85ドル拡大)、円建てで4,101円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月5日 16時30分頃 6番限)
7,874円/g
白金 3,773円/g
ゴム 257.5円/kg
とうもろこし 48,250円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「悪手1:経済指標発表時に純金積立を開始する」

前回は、「悪手(あくしゅ)は、失敗・失策のこと」として、「インフレ投資」が叫ばれる昨今、筆者が考える、コモディティ投資を考える上でのヒントを述べました。

今回は、「悪手1:経済指標発表時に純金積立を開始する」として、筆者が考える、コモディティ投資における3つの悪手(あくしゅ)のうちの1つについて、述べます。

悪手1は、言い換えれば「短期的価格急変時に、超長期的投資手法を開始すること」となります。その裏である「超長期投資前提で、同一ポジションを継続して保有できる日数に限りがあり、レバレッジがかかり、短期投資になじむ投資手法を用いること」も悪手です。

想定する「時間軸」と取引する「金融商品」の組み合わせが悪い場合、投資効果が低下します。例えば金(ゴールド)の場合、米国の経済指標発表直後の数秒から数十分間、価格は大きく動くことがありますが、この値動きを「純金積立」で収益化することは困難です。

「積立」は一度に購入してしまわずに、時間を分散して購入していく、数年から数十年を想定した取引です。このため、注目するテーマは、経済指標が関わる「短中期」の「代替通貨」「代替資産」ではなく、「超長期」の「大局的な社会変化への対応」です。(下図参照)

「純金積立」と異なり「先物」は、レバレッジ(てこの原理)が効いている(投下した額以上の損が発生する場合があるが、思惑通りに相場が推移すれば利益が大きくなる)、「限月(げんげつ)」という、同一ポジションを保有できる日数に限りがあるルールがあります。

また、値下がりで利益が発生(値上がりで損が発生)する「売り」でも取引ができるため、経済指標の発表をきっかけに、価格が急落し始めた場合、その急落を利用して利益を狙うことが可能です。これらは、「先物」が「短中期」の取引になじみやすい特徴と言えます。

経済指標の発表直後という、短期の売買で利益を狙いやすい(先物やCFD(差金決済取引)がなじむ)場面で、超長期で利益を狙うことを前提とする「積立」を開始することは、「市場環境や銘柄の特性」と「取引の意図」が食い違う「悪手」と言えるでしょう。

こうした「悪手」を指さぬよう、材料が影響を及ぼしうる「時間軸」と、それになじむ「金融商品」の組み合わせを意識しなければなりません。

図:金(ゴールド)市場の七つのテーマと時間軸、投資商品の関係


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。