減産非順守でもエクアドルが原油生産量を減らさない理由

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。57.02ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,517.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は12,070元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年10月限は450.5元/トン付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで562.65ドル(前日比5.65ドル拡大)、円建てで1,912円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(9月9日 18時54分頃 先限)
 5,182円/g 白金 3,270円/g 原油 37,630円/kl
ゴム 165.3円/kg とうもろこし 21,450円/t(5番限)

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「減産非順守でもエクアドルが原油生産量を減らさない理由」

前回は「ベネズエラの原油生産量は再来年5月にゼロになる!?②」として、特に今年に入り、米国のベネズエラからの原油や石油製品の輸入量が急減していることについて書きました。

今回は「減産非順守でもエクアドルが原油生産量を減らさない理由」として、ベネズエラと同じOPEC加盟国のエクアドルの、原油生産量の推移と減産実施の生産量の上限について書きます。

現在の協調減産は2017年1月に始まりました。そして、2018年12月に大規模な減産のルール変更がありました。

このルール変更で、エクアドルにおいては日量1万4000バレル、生産量の上限が引き下がり、減産が厳格化されました。同国は減産順守をしにくくなった国の一つです。

以下のグラフは、エクアドルの原油生産量と減産実施における生産量の上限を示しています。

生産量の上限を上回って生産をすれば、減産非順守、下回って生産をすれば減産順守です。

足元のエクアドルの原油生産量は、2018年ごろとあまり変わっていません。しかし、生産量の上限が引き下がったことで、減産非順守状態が続いています。

なぜ、エクアドルは減産を順守すべく、原油生産量を減らさないのでしょうか?

報道で言われている「債務の罠」が一因とみられます。

中国がお金を貸し(エクアドルが中国からお金を借り)、その莫大なお金をエクアドルが返済するために、原油を生産し続けていると言われています。

お金を返済をするためには、外貨を得なければならない、そのためには原油生産量を増やさなければならない、ということです。

減産実施よりも自国の財政事情を優先し、その結果、減産非順守の状態が続いていると言えます。

中国へのお金の返済と減産の順守。エクアドルは立場上、両方とも達成しなければならないわけであり、非常に悩ましい状況に陥っていると言えます。

図:エクアドルの原油生産量と減産実施時の生産量の上限
単位:千バレル/日量
エクアドルの原油生産量と減産実施時の生産量の上限

出所:OPECのデータをもとに筆作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。