[Vol.1286] ドクター・カッパーの診断の対象範囲はどこ?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。95.68ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,721.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,125元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年09月限は659.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで854.45ドル(前日比1.15ドル拡大)、円建てで3,776円(前日比5円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月27日 17時59分頃 6番限)
7,547円/g
白金 3,771円/g
ゴム 239.3円/kg
とうもろこし 46,050円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド
NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ドクター・カッパーの診断の対象範囲はどこ?」

前回は、「価格推移に見る「ドクター・カッパー」の危うさ」として、「ドクター・カッパー」の価格推移にみられる危うさについて、筆者の考えを述べました。

今回は、「ドクター・カッパーの診断の対象範囲はどこ?」として、「ドクター・カッパー」の診断範囲について、筆者の考えを述べます。

「ドクター・カッパー」は、どこの景気動向を診断しているのでしょうか。最近の報道のいくつかは、足元の銅価格の急落は、世界景気の鈍化を示唆している、つまり、ドクター・カッパーは「世界の景気動向」を診断しているとしています。

「ドクター・カッパー」を論じる上で、「どこ」の議論が欠かせません。このドクターが特定の部位や領域について診断しているのか、全体を俯瞰(ふかん)した診断をしているのか、これは重要なことです。

以下のグラフのとおり、「ドクター・カッパー」の診断範囲は変化しています。1999年は、世界をほぼまんべんなく診断していましたが、2019年には半分が「中国」になっています。「現在の」ドクター・カッパーが、世界全体を診断していないことがうかがえます。

中国経済が世界経済をけん引している状態であれば、「ドクター・カッパー」が世界全体を診断していることになりますが、近年の中国の経済成長の度合いや、米中間の政治・経済のデカップリング(つながり欠如)が目立っていることなどを考えれば、中国が世界をけん引しているとは言い切れません。

その意味では、足元の銅価格の急落の主因は「中国の景気鈍化」によるもの、と解釈することもできるでしょう。コロナ感染再拡大、数々の政治不信、各地で噴出する人権問題など、中国独自の材料が主因で、銅価格が下落している可能性があるわけです。

図:銅の需要国
図:銅の需要国

出所:JOGMECのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。