「OPECプラス」を受けた原油見通し

著者:菊川 弘之
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 今年4月に合意した「OPECプラス」の大幅協調減産は、段階的な減産縮小(事実上の増産)を経て8月末に終わる。ただし、設備の老朽化に加え、脱炭素の流れに伴う投資不足により、ナイジェリア・アンゴラなどでは生産能力自体が低下している。OPEC内では、サウジアラビアとUAEは増産余地があると考えられているが、既に両国とも、過去最大生産量に近づいている。

 「OPECプラス」に増産余力がないことが、大幅増産回避の一因であり、原油市場にとっては下値支持要因となるだろう。

 一方、ロシアのウクライナ侵攻後、初となる米ロ外相電話会談が先週末に行われた。これまで、外交チャンネルがシャットアウトされ、各メディア報道を通じて、双方が相手側の意図を汲み取るしかなかったが、直接交渉で偶発的な事故を回避する方向に動き始めた事は、停戦交渉へ向けた前進である。

 ウクライナのゼレンスキー大統領も今週、ロシアとの戦争終結支援を求める為に、習近平国家主席と「直接」協議する機会を模索していると述べている。

 更に、米国とイランは4日から2015年のイラン核合意再建に向けた間接協議を今週ウィーンで再開する。台湾情勢の緊張もあり、米国は2正面作戦を採る余裕はなく、米国の強硬姿勢の後退は、原油市場にとっては上値抑制要因となるだろう。

OPECプラスの生産は目標を下回っている
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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