[Vol.1308] ドイツの電力価格高騰、この半年で拍車かかる

著者:吉田 哲
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原油反発。天然ガス価格上昇による連想買いなどで。93.75ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,734.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,790元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年10月限は728.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで894.4ドル(前日比2.6ドル縮小)、円建てで3,936円。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月29日 大引け 6番限)
7,655円/g
白金 3,719円/g
ゴム 228.5円/kg
とうもろこし 50,190円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY天然ガス先物(期近) 日足  単位:ドル/BTU(英国熱量単位)
NY天然ガス先物(期近) 日足  単位:ドル/BTU(英国熱量単位)

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ドイツの電力価格高騰、この半年で拍車かかる」

前回は、「欧州の天然ガス価格高騰はビジネスチャンス」として、米国の天然ガス(LNG)と原油輸出量の推移を確認しました。

今回は、「ドイツの電力価格高騰、この半年で拍車かかる」として、欧州のエネルギー価格とドイツの電力価格の推移を確認します。

ロシアがウクライナに侵攻してから、先週で半年がたちました。西側諸国は、エネルギーの不買を敢行したり、銀行決済網から排除したり、ビジネス撤退を加速させたりして、ロシアへの制裁を強化してきました。ロシアに戦費を獲得させないことが、目的の一つです。

原油や天然ガスが売れなくなったり、世界的な経済圏から排除さたり、ビジネス撤退が相次いだりすれば、財政が困窮し、これ以上戦争を続けられなくなり、ロシアは白旗をあげる。侵攻開始前後から、多くの西側の人々はそう思っていた節があります。

こうした制裁の効果は出ているのでしょうか。もうそろそろ、ロシアが白旗をあげそうになっているのか、という問いですが、答えは否でしょう。

東部を中心に、商品の購入時にルーブル(ロシアの通貨)を使わせたり、ロシア国籍を取得しやすくしたり、南部の原子力発電所を脅かしたりするなど、ロシアはウクライナに居座り、影響力を行使し続けています。

この半年間、世界で何が起きていたのでしょうか。西側が「買わない』と宣言し、ロシアが『出し渋り」をしている天然ガスや原油、発電向けで天然ガスの代替品になり得る石炭、ロシアとウクライナが主要輸出国である農産物、ベラルーシ(ロシアの同盟国)が主要輸出国である化学肥料の価格が高騰しました。

また、ロシアの友好国と非友好国(西側およびその友好国)とで異なる価格設定(一物二価)が発生したり、インフレで主要国の政治・経済が不安定化したり、高インフレを受けて大衆の不満が噴出したり、リーダーの最優先事項がウクライナ危機からインフレ対策にシフトしたり、低所得国で政情不安が拡大したり、化石燃料価格の高騰により産油・産ガス国・企業の収益が向上したりしました。

ドイツでは、以下の通り、ウクライナ危機勃発によって拍車がかかった天然ガス・石炭価格の高騰により、電力価格の高騰が続いています。高騰を受け、ドイツ政府は先週、オフィスや公共施設の暖房の上限設定温度を19度にする法令を定めました(9月1日から6カ月間)。価格高騰を省エネで回避する狙いがあります。

この半年間、西側諸国において、ウクライナ危機起因の負の影響が拡大し続けたと言えるでしょう。

図:欧州のエネルギー価格とドイツの電力価格の推移(月間平均) 2022年2月を100として指数化
図:欧州のエネルギー価格とドイツの電力価格の推移(月間平均) 2022年2月を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。